驚異の極限生物ファイル

極限の環境に生きる生物たちを紹介。
極限の環境とは、「極寒」「高温」「乾燥」「高圧」「深海」など、通常の生物であれば生命を維持できないレベルなのだけど、実際にどの程度なのかを読んでみると、ちょっとやそっとじゃない。吹っ飛ぶレベル。
他の惑星に行っても生きられるかもと思ってしまう。
皮膚が丈夫とか、器官のちょっとした発達程度でなく、生物体自身が通常環境に生きている生物と異なった生命体であるかのよう。
この本では、どういう身体の仕組みと工夫で耐えられるのかを分かりやすく説明してるので、すごさに実感が添えられるのだ。


それらの環境適合能力や進化は、たしかに「すごい!」のだけど、一方で「ゆるい!」のも特徴。
自分に合わせて環境を変えてしまい、結局自分たちが苦しんでいる人間と異なり、彼らは実にゆる〜く地球に適合しているよ。

ページをめくる毎に感嘆してしまうのだけど、この1ページ、この1行に研究者のエネルギー、時間、予算がどれだけ費やされたかと思うと、人間の探究心のすごさにも頭が下がるよ。

各ページにある「Dr.長沼のここが凄い!」がほんとに凄い!

常に氷の上にあるペンギンの足の静脈は、動脈に巻きついてるらしい。
動脈の熱を使って、静脈まで温めてるのだとか。




−70℃まで耐えられる北極に住む蛾「ハイアークティックモス」。
幼虫は、11ヶ月間は氷の中で冬眠。6月だけ地上に出てきて、日向ぼっこ。
成虫になるのに7年かかり、やっと大人になって出てきた6月には、卵を産んで死んでしまう。



50℃まで耐えられる砂漠に住むカタツムリ。



赤血球の形と面積を変えることで、酸素の薄い高地でも時速50kmで走れるビクーニャ



ヒレナガチョウチンアンコウは、オスはメスの20分の1ほどの大きさで、メスにくっついて生きる。寄生するんだね。
くっついていると、そのうちメスの血管がオスの体にはいって一体化。
栄養供給もここからされ、オスは自分で呼吸さえしなくなる。目も退化し、内臓もなくなるけど、精巣だけは残り、繁殖できるのだとか。



幼虫が原油の中で育つセキユバエ。




あのクマムシも登場。
乾燥すると仮死状態を維持することができる。
この状態にあると、150℃の高温、-273℃の低温、乾燥、アルコール、紫外線、真空、深海1万メートルの75倍の圧力でも大丈夫。
更に、放射線にも強く、5700Svを浴びても生存できる。(人間の致死量は5Sv)
でも、仮死状態でない時は、踏まれただけで死んでしまう。




こんな生物のことを知ると、火山の奥のマグマが地球の中心に繋がっていることが実感でき、地球の鼓動が聞こえてくるような気がしてしまうよ。