天使の囀り

天使の囀り

天使の囀り

アマゾン探検隊から戻った婚約者が、容姿はそのままなのに、別人のような人格になっていることに驚く。
精神科医の北島早苗は、この婚約者のどんどん異変が進み、「死恐怖症」と思われていたのにも関わらず、自殺したことが信じられない。
しかも、同じ探検隊にいたメンバーも、トラウマや恐怖症など、本人が最も避けたいはずの事柄や方法によって自殺を遂げるのだ。
そして、探検隊にいなかった無関係と思われる人々にまで、その現象が見られるようになった。
調査をしていくにつれ知り、見てしまった光景とは。



最初は、非科学的な直球のホラーかと思ったら、自然科学ががっつり裏付け。
医学という武器をもちながら、命の考え方という死角に立ちすくむ。
「あぁ、真面目な医療ものだったのね」と思ったら、すさまじくグロテスクな描写を突き付けてくる。
狂気とも違うから始末が悪い。



というわけで、ストーリーの構成がとってもおもしろかったよ。



自然科学(生物学)・医療・心理学・社会学(医療事故)・・・いろんな素材が絡み合っているけれど、いずれのテーマもよく取材されてるなあと感心する。
オカルトホラー的な怖さが、読者の現実世界でシミュレーションできる怖さにいつの間にか変化し、更に悲しさを伴う恐怖へ。
「怖さ」とは、正体や原因が分からないために自分の中で膨らんでいく感覚だけど、このストーリーの中では、知れば知るほど恐怖が増大していく。
専門的な用語がでてきたり、科学的説明がしっかりされる部分では、早く先を読みたいのに足止めをくっているような焦りさえ感じるよ。



単に恐怖で読者を煽るのではなく、登場人物それぞれの「大切な人への想い」がストーリーを通して感じられるので、読後の余韻は悲しみだった。


本の紹介をしてくれたYしてるさん、ありがとう。