自閉症の僕が跳びはねる理由

副題「会話のできない中学生がつづる内なる心」

自閉症の僕が跳びはねる理由―会話のできない中学生がつづる内なる心

自閉症の僕が跳びはねる理由―会話のできない中学生がつづる内なる心

自閉症である著者自身(執筆時、中学生)が、自閉症の特徴や行動の意味を説明・分析する。
「会話ができない自閉症の人が書いた」とは思えないというのが本音。

「なぜくり返し同じことをするのですか?」の回答に「好きであったり、楽しいから繰り返すのではない」とあり、驚く。脳からの指令に従っているのだと。
この指令に背くことは、地獄に突き落とされるような恐怖を伴うことなのだと。生きること自体が戦いなのだと。
「何度注意されても分からないのですか?」の回答も衝撃的。
やってはいけないと分かっていても、「やる→何かが起こる→人に注意される」という以前の場面を再現したい気持ちが勝ってしまうのだそうだ。
その気持ちに身体を委ねることはかなりの快感。我慢することはものすごく苦しいのだとか。
そして、それでもやめたい気持ちがあって、誰かに止めてもらいたいと思ってる。
「どうしてこだわるのですか?」の回答なんて、自閉症でない人と全く同じなんだよね。
「お散歩が好きなのはなぜですか?」の回答にはじーんときてしまった。
「自由時間は不自由な時間」という気持ちにはっとする。

「自分がうまくできないことを周囲の人ががっかりすることをすごく恐れている」とか「また同じことをしてしまった時の自己嫌悪」とか・・・ものすごく気を遣いながら、「自分などが生きていていいのか」という思いまで抱えている。
この本では、「なぜ、自閉症の人は〜をするのですか?」と素朴な疑問に1つ1つ答えていく。
物の見方や記憶の方法、ワクワク感、もっと知りたいという気持ち・・・ちょっと羨ましさも感じるほど。
自閉症でない人たちが環境や植え付けられた概念でグルグルになってるとしたら、自閉症の人たちはグルグルから解放されてる状態とも言えるかも。


伝えることが苦手という特徴が「どう苦手なのか」が分かって、今まで自閉症のことを全然分かっていなかったことに気付く。
「会話が難しい」という特徴は、「伝えたい気持ちがあるのに、違う言葉が口から出てしまう」「頭で文章を作るのに時間がかかる」であって、伝えたい事や考えがないのではない。
衝動的な行動にもちゃんと理由がある。
著者は会話はできないけど、訓練により筆談ができるようになり、パソコンで原稿も書くようになったらしい。
自分自身の表現方法を持たない多くの自閉症の方の気持ちを伝える役を担っているように見える。
著者は、「THE BIG ISSUE日本版」にも連載があり、他出版多数。