世界で一番美しい愛の歴史

世界で一番美しい愛の歴史

世界で一番美しい愛の歴史

すごいタイトルの本でしょう?
え?私に似合わない?
あれえ?





「愛は、愛だと意識し始めた時から、当人たちを悩ませる」ような気がするので、実際は、あまりごちゃごちゃ考えない方がいいんじゃないかななんて、漠然と考えています。
でもね、そんな考えも自分が生きている「時代」に洗脳された結果に過ぎないのかもしれません。
男女のつながりは、国家、政治、宗教などにおそろしく介入され、夫婦の生活さえコントロールされていたのです。





この本は・・・ちょっと電車で堂々と開いていられないような描写も載っているのですが、人間が「オスとメス」から「男性と女性」になり、歴史が求めたそれぞれの性をまっとうするようになった経緯をインタビュー形式でひも解いています。
本の編者であるドミニック・シモネが、9人の歴史家や作家に先史時代から現代にいたるまでの男女関係についてインタビューします。
1つ1つの愛についての物語はたくさんあるけれど、時代を超えた愛の歴史は少ないのではないかな。
歴史は、遺されたものや書物から解読することができるけど、男女の秘密は人の眼に触れられないようにするのが一般的です。
秘密の愛の手紙も隠されたり焼かれたりします。
社会や国家が求める男女を演じながら、男女は実のところ、どのように通じ合っていたのでしょう。
女性が男性の道具であり、子どもを産むためにほとんど会ったこともない男性と結婚していた時代に、「心」を通わせる恋愛は存在したのか?






先史時代には、家族愛がすでに存在していたそうです。
コルシカ島で、紀元前8000年に35歳で死んだ女性の墓が発掘されたとのこと。
その女性は、高い所から落ちたらしく、ひどい骨折、体の麻痺・・・と食事もろくにできない状態だったことが推測されています。
生きるか死ぬか、弱肉強食と思われるその時代、動けない者は死ぬしかないはずなのに、その女性は介護され、何年も生き延びていることが分かっています。





ポンペイの壁画には、ほとんど猥褻と言えるようなものも多いようです。
そんな中、古代ローマ時代のカップルの姿も描かれています。
本で紹介されている夫婦は、仲睦まじそうな笑顔。
でも、そこに歴史的背景が読み取れるそうです。
女性は、書字板と尖筆を持っているので、この二人が夫婦であることが分かるらしい。
この肖像画はそれをアピールしたかったのです。
結婚した女性だけが教育を受けられた時代で、内縁の妻は無学文盲。「それ」とは、「私たちはローマ貴族社会における模範的夫婦です」ということです。





当時は、女奴隷がおり、奴隷には何をしてもかまわなかった。
女性の権利なんて、誰も考えません。
男性は、「女奴隷ハーレムで楽しく暮らす」か「きちんと結婚して、国家に認められる嫡子を生み、国家につくす」か悩んだりしたそう。
「結婚」=市民として認められることなのだそうです。
あなたなら、どちらを選びますか?
どうも、現代の結婚観とはほど遠いですね。






だんだんキリスト教の力が政治にも影響を及ぼすようになり、社会生活を支配するようになると、結婚も「神の御許」で行われるようになりました。
なんだか男女の自由が奪われたように感じられるけど、実は、以前よりも自由に・・・男女のつながりが本人たちの意志にゆだねられる割合が増えたのだそうです。
それまでは、国家権力が力を維持するために都合のよい法律や決まりを押しつけてきていたのですが、宗教によって個々が守られるようなったと。
なるほどね。




でも、また状況は変化していきます。
聖書の言葉「汝、姦淫するなかれ」の理解も現在と違います。
とにかく肉欲は悪である、と。
過激な人は、自らを去勢してしまったとか。
夫婦になること自体がもう「汚れ」なわけで、そういった意識からなんだか変わった行為はOKということになっていったり。(←電車で開けないページ)






ルネッサンスは自由の象徴のように思われますが、ここでの解釈は、中世キリスト教による快楽と感情の統制が背景にあるがため、美術に発散を求めたということでした。
決して、人々の生活自体が自由だったのではなく、鬱屈したものだったからこそ、妄想が膨らみ、それを「芸術」としてアウトプットしたと。
純潔監視委員会が美しく若い女性を道徳を乱す行為をしないか見張っていた時代。
兵士と一緒にいた女性が見つかると、耳や鼻を切り落とされた時代。
結婚していてもしていなくても、裸で眠ってはいけない時代。






思想家ルソーは、なんと家庭にいる女性たちを熱狂させたそうです。
ルソーの考えでは、夫婦に義務などはないのです。
たとえ社会的・家庭的拘束を受け入れながらでも、自分を花開かせる生き方はできると示してくれたのです。





さて、現代、女性のファッションも露出度が高くなりました。
世の中は、義務と権利の争いだらけ。
さて、今後、男女の関係はどう変わっていくのでしょう。