タイタニックの最後の晩餐

タイタニックの最後の晩餐―豪華航路のディナーとレシピ

タイタニックの最後の晩餐―豪華航路のディナーとレシピ

あのタイタニック号での豪華な生活を「食事」を通して感じられる本。
1等の客への食事の凄まじい、いや、すばらしいこと。
船内の一流の客が行うパーティーでは、陸地と同じように何週間も前に招待状が届き、出席する名士たちの紹介がされる。
客は1日に何度も着替え、その荷物も大変なものだったとのこと。
実際に乗船していたこれらの人たちの紹介やその人たちのコメントも掲載されている。
成金は入ることのできない、当時「一流」と呼ばれた階級に属する人たちの文化が凝縮された空間、それがタイタニック号だったようだね。



3食だけでなく、軽食や飲み物、夜食までサービスが行き届いていた。
また、2等、3等も豪華さは1等には劣っていても美味しい食事をとれたらしい。
それぞれの等級のメニュー紹介やレシピまで書かれている。




各等級の食事の様子や船内の生活の絵や写真、または映画のシーンが盛りだくさん。
亡くなった方から濡れたメニュー(食事の前に置いてあるその日に出される食事内容一覧)も見つかっている。
そんな生々しい記憶の断片も。

そして、最後の時についても。



まだ手間を省くための調理器具も発達していない時代に、乗客乗員2,223名の食事を準備するのに、どれだけのスタッフがどれだけの時間とエネルギーを費やしたかも想像できる。
調理スタッフにおいては、ただの料理人ではなく、各調理作業における専門家が集められていたそうだ。
実際、短い睡眠時間以外は下ごしらえや調理で休む暇もなかったみたい。
いよいよ沈む船から逃げる時も、調理スタッフは準備中の食材のことを気遣っていた。
最高のサービスを実現するために、船の運航に関わらない乗員は、ホテルマンのような役もやっていたらしいよ。お客たちと同じくらいの乗員スタッフがいたそうな。



タイタニック号を称える言葉が印象的。
「大きくて速い船を造ることはできる。しかし、タイタニック号を支えていたのは心配りと努力だ」
単にきらびやかな豪華客船というだけではないんだね。


発見された沈んだ船からは、最後のディナーを思わせる品々も見つかったらしい。
封をされたままのワインやシャンパン。
水に沈むことなど考えもしなかった数時間前に、冷めないようにボイラーの上に置かれたティーカップたちは、人の手で置いたかのようにそのままに。
食器もきれいに積み重なって。