男はなぜ暴力をふるうのか

男はなぜ暴力をふるうのか―進化から見たレイプ・殺人・戦争

男はなぜ暴力をふるうのか―進化から見たレイプ・殺人・戦争

実は、10年くらい前から、なんとなく疑問に思っていた。


どうして、殺人を犯すのは、女性よりも男性が多いのだろう?
どうして、性的暴力をふるうのは、女性よりも男性が多いのだろう?
どうして、戦争に行くのは、女性でなくて、男性なのだろう?



マスコミの報道が、男性が起こす事件に偏っているからではないようだ。
夜道を1人で歩いていて危険なのは、男性よりも女性だ。
女性だって、武器を使えば、戦地では男性と同等では?



人権的な点では、性差別は不合理だけど、生物学的には男女に差があるのは明らかなわけで、それぞれの特徴をふまえて社会を営んでいくのは自然なことだと思う。
女性が戦争に行かないのは、子孫を残すという仕事があるからかもしれない。
この本の論点は、女性を戦争に行かせないのは、議論の上で「決めた」ことというよりは、もっと原始的・生物的・本能的に「選択」しているからではないかということ。




殺人も性的暴力もあってはいけない。
毎日毎日毎日毎日。
この手のニュースにうんざりする。
こういった行為は許せないし、戦争や犯罪で大事な人を失った方々の気持ちを思うと、顰蹙買いな言い草になるかもしれないけれど、理論や人間の頭を寄せ合って行う裁判などでは届かない、もっと原始的な深いところに、事件の素養(時には願望と言い換えることができるかもしれない)のようなものが潜んでいるような気がする。
もちろん、それは私自身にもあるし、立派な人にもあるし、子どもにもある。
「殺してやりたい」と思うことがあるかもしれないし、ホラー映画を楽しむし、ゲームでどんどん殺す。
だから、殺人は起きるのが当然だということではなくてね。
人間にはもともと暴力の素質や願望があることを認識しないと、殺人も性的暴力も減らないような気さえするんだよね。
「殺す素養があっても殺さない人」を増やせないと思うんだよね。




女性だって、殺すし、暴力もふるう。
著者は、さまざまな実験や統計を用いて、男女の犯罪の動機や目的の違いを調べたり、戦争での心理状態を探ったりもする。



戦争でつらい思いをする人が増えるのは明らかでも殺戮をやめないのは、地球上に人間が増えすぎないようにするための、自然科学的な自動減少行為(自殺行為)を本能的に行っているからではないかと感じてしまうこともある。
大儀は、国家や民族の言い分として存在しても、もっと原始的なプログラムに動かされているような気がしてしまうんだよね。





本に書かれていたダーウィンとベーコンの言葉。

チャールズ・ダーウィン
しかしながら、以下の点は認めなければならいだろう。人間には、いくつもの気高い性質、つまり、最低にまで堕落した者にさえ同情する心、人ばかりでなく非常に下等な生き物に対しても慈悲深い心、太陽系の動きと成り立ちを解明したほどの神のような知性があるにもかかわらず・・・・いくらこうした高い能力があっても・・・・人体の構造の中に消すことのできない下等な起源の封印があるのだ。



フランシス・ベーコン
自然に従わなければ自然を支配することはできない。