チェ・ゲバラの本(その2)更に4冊
ゲリラ戦争 〜キューバ革命軍の戦略・戦術〜
- 作者: チェ・ゲバラ,Ernesto Che Guevara,甲斐美都里
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2008/07
- メディア: 文庫
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通常の戦争とは異なる、ゲリラ戦争ならではの戦略、原則、組織論、生活方法を伝授。
会社でいうところの社訓と規則、マニュアル、コンプライアンスを兼ねたような内容で、ゲバラが後に続く革命家たちをなんとしてでも導きたいと願っていることがジンジン伝わってくる。
上から目線や自画自賛はなく、無駄のない必要不可欠な知識と持つべき信条を直球で投げかけている。
起りうる状況や問題を確実に処するための実用書だね。
戦争の方法なんて、いくらゲバラが書いたからといっても、読んでもつまらないかなと思ったけれど、NO!
彼の信念と仲間への想いや組織と意識を築く手腕を再確認して、ドキドキ。
ゲリラは、行軍する地域住民の信頼を得ることが最も重要。奪略などもってのほかで、物資は必ず「買う」。
血気だけ盛んで使命感の薄い者は、志望してきても戦士として迎えない。
革命軍と敵軍は、持っている情報に大きな差があるのがゲリラ戦争の特徴。
負傷した戦友を決して置き去りにするな、任務と報酬、女性戦闘員への信頼とその役割。
男女の不祥事は避ける教育が必要だが、愛し合う者同士であればゲリラ行軍中でも夫婦として生活できる措置。
テロリズムとの違い。
また、共産主義の思想や本についてかなり研究しているゲバラだけど、彼の革命がいずれの影響も受けておらず、完全オリジナルであることは、実は革命成功につながる重要ポイントなのだろう。
この本にも、共産主義系の言葉やレーニン等の本からの引用は排除されてる。
この新訳は、ゲバラが先に書いたものに加筆・修正を加えて推敲したもので、注釈として彼がどんな風に修正箇所を書いているかを補足してる。
トラベリング・ウィズ・ゲバラ
- 作者: アルベルト・グラナード
- 出版社/メーカー: 学習研究社
- 発売日: 2004/10/06
- メディア: 単行本
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この旅を企画し、ゲバラを誘った朋友、アルベルト・グラナードが著者。
映画「モーターサイクルダイアリーズ」は、ゲバラの同名日記と共に、このアルベルトの日記も基に作成されてる。
映画ロケには、アルベルトもアドバイザーとして参加してるそうだ。
二人とも旅日記を率直かつセンスある文章で記録しているけど、アルベルトの日記は細やかなできごとや事のながれについて詳しく描いており、友ゲバラへの敬愛に満ちている。
ゲバラは、ラグビーに熱中した時期もあり、サッカーも好きだったらしい。
二人がコロンビアでサッカーチームのコーチや選手をして旅費を稼いだくだり、レアル・マドリードの試合観戦の感想・・・楽しくてニヤつきながら読んでしまう。
ゲバラは英雄になったけど、このアルベルトもなかなかすごい人。
旅に出た時すでに生化学者であったのだけど、研究所やキューバ国立保健センター、遺伝学協会を設立し、責任者を務めるなど大変な貢献をしている。
旅が終わった時、ゲバラはアルゼンチンに戻ったけれど、アルベルトはベネズエラでハンセン病に関わる仕事を得て(それまでも彼はハンセン病の研究をしていた)、その地に残った。
またすぐに会えると思っていた二人だけど、再会は9年後。
ゲバラはキューバの指導者の一人になっていた。
そして、ゲバラとの約束通り、アルベルトはキューバに医学部も作った。
チェ・ゲバラの遥かな旅
- 作者: 戸井十月
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2004/10/20
- メディア: 文庫
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ゲバラが処刑された地にも赴いたとか。
小説なので、やや脚色されてるような気もするけど。
ボリビア・ゲリラ隊40名のプロフィールと戦死状況付き。
秘密工作者 〜チェ・ゲバラを殺した男の告白〜
- 作者: フェリス・I.ロドリゲス,ジョンワイズマン,落合信彦
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 1990/10
- メディア: 単行本
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CIAのエージェンシーであった著者は、チェ・ゲバラを宿敵とし、処刑の直前にゲバラと一緒にいた。
この本を読んで、立場が変われば、「正義」なんていく通りも存在することを再認識した。
できれば処刑はせず、生きたまま捕えておきたかったけれど、ボリビアには捕虜を生かしておく習わしはなく、それに刃向うことはできず、処刑執行を指示したのがこの人。
ゲバラが最後に残した言葉の1つ、「妻に再婚して幸せになるように伝えて」は少し彼らしくないようにも感じていたけど、ほんとだったんだな。
「捕虜は大事に扱い、残酷な拷問はしない。一方、敵方はひどい拷問をするのだ」というのは、キューバ側もアメリカ側も言っている。
情報操作は当たり前、相手だけでなく味方の判断さえ操作するための情報も流すのが戦争。
もはや、どちらが正しいかなんて、ない。
処刑直前に、ゲバラと並んだ写真を自分のカメラで撮らせた。
しかも他にいたカメラマンのカメラを操作し、撮影できなくしておいて、自分のカメラでのみ命あるゲバラの写真を撮れるように細工した。
また、亡くなったゲバラと自分が同じ腕時計をしているのに気付き、ゲバラの時計を欲しがったボリビア兵にこっそり自分の時計を渡し、ゲバラの時計は自分が持ち帰る細工もしている。
米国に亡命したキューバ人なので、「母国はキューバ、国籍アメリカ」。
キューバにある邸宅はカストロ率いる政府に没収されたそうだ。
チェ・ゲバラの逸話だけでなく、秘密工作者としての自伝となっているので、ベトナムでの活動などにも触れ、こういった仕事がどのように遂行されているのかが分かる。
著者が「武勇伝」と語っていることが、あまりそのように感じられないのは特殊な業務をしている者と一般人の差かしら。