トラウマ映画館
- 作者: 町山智浩
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2013/09/20
- メディア: 文庫
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でも、「トラウマ」として残るのは、単にお化け屋敷的にコワイとか、1リットルも涙を流した悲恋だからではない。
その映画に、自分の存在を揺るがすような恐怖、生い立ちや人生の底辺にある体験、そして自分の中に埋もれているインモラルとか悪と共鳴するものがあるから残る。
「残る」というよりは、逃げたくても映画が離してくれなくなるんだね。
ここで紹介されている作品は、いずれもマイナーな部類にはいる。
「バニー・レークは行方不明」「裸のジャングル」「マンディンゴ」「マドモアゼル」・・・
暴力、死、恐怖、不安、孤独、インモラル・・・と精神の暗部や悪のオンパレード。
紹介文を読んだだけで、トラウマを背負ってしまいそう。
自分が観る勇気は持てないし、私の大事な人たちには絶対に見せたくないというのが本音だ。
昔はこういう映画を日常的にテレビで放映していたことにもあらためて驚く。
当時公開されても酷評を受けて、葬られた映画も多数。
もちろんビデオやDVDになっていないものが多い。
「宝島」などの編集も手がけた映画評論家である著者は、映画の知識はもちろん豊富で分析も冷静沈着。
蘊蓄や製作年が離れた作品同士の関連性や影響、出演者の背景についても語る。
淡々と自身のトラウマについて語るのだけど、有識者が情報を披露するのではなく、なかなかシビアな自分の人生も吐露しつつの感受性豊かな内容になってる。
それらのトラウマ映画が、社会に訴えかけるメッセージを持っているのは興味深い。