母性

母性

母性

自分の存在全てを理想の女神である母に依存し、「母に喜んでもらうために」「母ならどうするか」という視点で生きてきた女性が、娘を産んで母親になった。
母をキリスト教の神のような位置に据えているため、娘への母性が歪められていく。


難しいテーマだと思う。
「マザコン」の一言で終わらせるわけにいかない。
「愛情」とか「躾」とか「思いやり」とか、美しくて正しいもの。
「ポリシー」とか「正義」とか「モラル」とか、自分が自分であるために大事なもの。


そんなものたちに、自分が絞め殺されていく経緯を描いている。
多面鏡に映った美しい人間が、それぞれの面で違う顔になっているような感じ。
内面の叫びを美しくて正しいもので均して生きていることによる歪み。
この歪みが、ギョッとするような言葉で登場する箇所がいくつかある。



だけど、本人をそんな状態から解放してあげることが、本当に本人を助けることになるかどうかは分からないなあ。
多分、絞め殺されつつあっても、自分の信念に基づいているから。
なんだか分かる私は、絞め殺されつつあるのかしら?


「母性」が、正しくて美しいことを前提とした絶対的な存在と据えると、母であるその人と子であるその人がその人でなくなってしまうことがある。
実際の社会で、よく見られることだったりしないかな。