粉飾
- 作者: 佐藤真言
- 出版社/メーカー: 毎日新聞社
- 発売日: 2013/03/28
- メディア: 単行本
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ノンフィクション。
しかも、書かれたのが2013年3月で、最高裁で上告中という現在進行形の著者の話。
銀行名などの名称も事実に沿って、そのまま記載されている。
第一勧業銀行(現みずほ銀行)を退職後、経営コンサルタント会社にはいり、取締役をやっていた2011年に東京地検特捜部に逮捕・起訴された。
「中小企業に粉飾決算を指示し、銀行から不正に融資を引き出した」という詐欺容疑。
本の2つのテーマは、そのまま判決に直結するもの。
(1)粉飾決算を銀行に提出して融資を受けることは、銀行を騙すことにならない。
騙したことになったとしても、実刑にされるほどのことはない。
(2)捜査当局にターゲットにされると、悪いこととは無縁と思っていた人も、ある日突然逮捕、起訴される。
(1)は、実際のところ、経営の実務に携わらないとピンとこないと思う。
「それが通用するなら、法律なんていらないでしょう?」となるのは当然だと思うけど、実情を知ると、規模は違えど「粉飾」していない中小企業は少ないのかもという視点がもててしまう。
この裁判が、著者と巻き込まれた企業だけの話でなく、全国の中小企業の社長たちの戦いの物語だというのは分かる気がする。
銀行に勤めたいと思ったことがなかった私だけど、著者の想いを読んで、銀行マンのやりがいの一つにこういったものがあるのかと今更ながら驚いた。
コンサルティングという仕事についても。
中小企業ながら、野望や夢を持っている経営者たちの相談相手になり、ビジネスをサポートしていくのは、お金まみれの世界のように見える金融業界の意外と知られない熱いやりがいなのかな。
個人の事件でマスコミに私生活をズタズタにされるというのは聞くけれど、会社規模となると、お金の動きでその被害が、全く事件に関係のないところまで及ぶのが明確になるね。
著者がコンサルを担当した会社(事件とは無縁)が、取引先から「あのコンサルと関わっていたなんて」と、取引を断ってくることもある。
社長って、心が強くなくちゃできないな。