英国レディになる方法

英国レディになる方法

英国レディになる方法

英国レディになるためのマニュアルということではないみたい。
生活に密着した習慣や道具が紹介されていて、現代で「伝統」とされているものが、実は変化を重ねてきたことが分かるよ。
イギリス最強のヴィクトリア朝時代(1837〜1901年)には、現代の「伝統」の基ができた時代とも言えるのかも。



キリスト教式結婚式のやり方もそう。
花嫁衣装が現代のように「白」となったのも、このヴィクトリア朝で、それ以前の衣装は結婚後も着ることができるような色やデザインのものだったとか。
「式の前に花婿は花嫁に会わないで、教会で待つ」とか、「富めるときも貧しきときも・・・」の文言を聖職者が言うようになったのも同時期。
花束を投げたり、米を撒いたりという風習はまだなかったそうだ。



「トワレット」
人前に出るための身づくろいや着替え、お化粧を包括して示す言葉なのだそうだ。
日常的なおしゃれも、パーティーの正装も、なんと婚礼の準備も全てこの言葉でOKらしい。
でも現代では、香水?トイレ(=化粧室)?という響きになってしまうね。



人間の髪の毛で作ったアクセサリーは、17世紀から男女問わず、愛の証として身につけられたそうな。
写真上の繊維を編んだようなブレスレットも髪の毛でできているし、ペンダントトップにも入れたり。
現代だと、髪の毛を身につけるなんて、ちょっとコワイ感じ?

赤毛のアン」にも、大切にしていた紫水晶のブローチに、母親の遺髪がはいっている場面があると紹介されてる。
このように、当時の独特の、かつ欠かせない生活習慣や文化を紹介しながら、まさにそれらが登場する小説や物語の一場面を挙げているよ。
「へええ、あの場面って、そういうことだったのか〜」とあらためて実感したり。
博物館の中の陳列物でなく、当時の実生活の中で「生きていた」モノたちであったことをより強く感じることができるのがおもしろい。




少女が大人に変化していく際に、そばにあった道具や大人には見つからないように楽しんでいたものも。
「ロマンス小説」は読んでいるのを人に見つかると恥ずかしいものだったらしい。
異性に対する意識や恋愛も変化してきたんだね。




シックハウス症候群もすでにあったとか。
ヴィクトリア王朝で大いに流行った「壁紙」。
この壁紙で、中産階級は趣味やステータスをアピールできたのだそうだ。
が!
壁紙を替える作業は、古くなった壁紙の上に新しいものを貼り付けるだけなので、不潔。
しかも、表面加工をちゃんとしていない壁紙は、塗料が分解し、空気中に有害物質を撒き散らしてしまう。
なんと、緑色に葉ヒ素が含まれており、朱色には鉛が。
中毒症状になった病人は、「転地療養」をして回復したけど、家に戻ったらまた中毒に。
当時、普通だった、あの優雅な天蓋付きベッド(いわゆるお姫様ベッド)も湿気がこもるし、手入れが大変なので衛生的でないらしく、かのナイチンゲールが使用廃止を主張したほどだそうだ。



以前、トルコに行った時に、市場でヒルを売っていて驚いた。
患部の血をヒルに吸わせて、病やケガを治す療法のために売られているのだ。
実は、これは英国でも19世紀になっても行われていたらしい。
画像はヒルを飼うための壺。一般家庭で飼うのも珍しくなかったとか。




「おまる」は、夜は大人も使っていた時代。
取っ手付きの陶器製の器。
子どものは、その縮小版なので、食器と見わけがつかないくらい。
なので、おまるの処理をする女中が炊事用のシンクを使ってしまわないように(笑)、子ども部屋のある最上階には絶対にシンクを造らなかったそうだ。
伝染病が怖い時代だし、衛生に気を遣っていたんだね。
画像(上)は、赤ちゃんのガラガラ。
銀製で珊瑚の柄がついてる!象牙製のものも。
赤ちゃんが噛んでも傷がついたり、毒になったりしない素材。

画像:中と下は哺乳瓶。
当時の衛生環境からすると、牛乳を赤ちゃんに飲ませることは望ましくなかったし、上流階級の母は母乳を与えるどころか、自分で子育てなどしなかったので、こういった哺乳瓶が必須になるらしい。





ペット事情もおもしろい。
特に子どもの情操教育や生活習慣のしつけにペット飼育は良いとされ、推奨されていたようだ。
主婦必携のマニュアル「家政の手引」には、ペットの飼い方まで書かれていたとか。
不思議の国のアリス」にヤマネをティーポットに押し込める場面があるけど、こういう小動物をティーポットで飼うことは実際にあったらしい。
様々な生き物、珍しい動物を飼いたがり、子ども部屋にハリネズミがいたり。



行事の起源や当時の楽しみ方も紹介されている。
イースター夏至ガイ・フォークスデイ。
本には家族が笑いあいながら、あるものを取り合っている絵がある。
何の行事かと思いきや、


ヴァレンタインデイ。


現代のものとは随分違うみたい。
もちろんチョコレートは登場しない。
鳥が関係してる!