華日記〜昭和生け花戦国史

戦後の生け花の歩みがこんなに壮絶だったとは。
これは実話を元に書かれているんだね。
巻頭に各派の家元たちの作品の写真が載せられている。




草月流の勅使河原蒼風
池坊の山本忠男(家元ではない)。
小原流の小原豊雲。
流派から脱退した中川幸夫




美しい華の世界が、意外にも熱く、政界をも巻き込むドロドロした面を持っていた。
花のことを大事にし、華道を大事にしようと必死になり、手段を選ばなかった故のドロドロ。
(この本の書き方がそんな感じなだけで、ほんとはもっと違うのかも?)



戦争が終わって、生ける花さえなくなってから、前衛と呼ばれる生け花が生まれた。
焼け野原に残った鉄や石を生けるのだ。
そんな前衛を行く派と古来の型を守ろうとする派のせめぎ合い。
世界へ飛び出す派。
華道大学を作る派。
そして、「家元制度」の不思議。
家元制度への反発で「個」の華道家となると、当時は展覧会さえ開くことができず、極貧生活となる。
生けた花をまたばらして、他の人が生けたりと、花を買うお金もなくなるのだ。





花という生き物を扱うこの芸術は、作品を売ったり、美術館に置いてもらうこともできない。
絵画や彫像の重鎮からは、「芸術とはいえない」とあしらわれていたんだね。
そんな華道の世界の収入源は生徒さんの師範登録料など。
これは決して安くないらしい。



そして、何より大変なのは、後継者選び。
周りが介入がすごくて驚く。派の繁栄・衰退がかかっているらしい。
王様を選ぶような状況!?
池坊」は、門下200万人の上に立つ人を決めるわけで、そのお嫁さん選びもまさに皇室並みの大変さ。
家元は、娘を珠のように大事に育て、自分の生け花を伝える。
自分の華道の全てをコピーさせるため、娘が二十歳を過ぎても一緒にお風呂にもはいっていた家元も。
ところがそこまでして育てた後の娘はどうなったか。
息子がどうなったか。



ドラマチックに過剰に書かれた部分も多いのかもしれないけど、かえって、私は華道に人間くささを感じて、ずっと魅力的に思えたなあ。



まさに戦国史