ザ・ベストテンの作り方

『ザ・ベストテン』の作り方

『ザ・ベストテン』の作り方

1978年から1989年まで、TVのゴールデンタイムで高視聴率を誇った歌番組「ザ・ベストテン」。
視聴者のハガキ投票で決まった人気ランキング10曲を紹介するのだけど、これが画期的だった。
ただ歌を聞かせるだけじゃなかったんだね。
スタジオ生放送で、スタジオに来ることができない歌手は、追いかけていって中継で歌わせる。
ドラマ撮影の合間、移動中の駅、コンサートの終了後・・・海外にも追いかけていたらしい。
今のようにTwitterFacebookもない時代に、歌手の歌以外の「おしゃべり」を聞いたり、歌手の「今」を共有できた。
今でも残るエピソードも多いみたい。




この本は、このザ・ベストテンという番組の「セット」をデザイン・指揮した美術デザイナー:三原康博さんとの対談形式で書かれている。
番組を見ていた人は覚えているかな?
ミラーボールのある登場口。
歌手たちは歌ったらいなくなるのではなく、応接セットのような空間にずっといて、「歌っていない時」の姿を見せる。
そして、曲ごとに変わる大がかりなセット。





おもしろいのは、デザイナーとTV局だけが躍起になっていて、歌手はセットに関係なくいつも通り歌うだけ・・・ではないところ。
数週間続けて同じ曲がランクインしても、決して同じセットは使わないらしい。
そうなると、歌手はこのセットとコラボするかのように挑んでくるそうだ。
今日のセット(デザイナー)がこうくるなら、曲のここでカメラを睨んでみるわ・・・とか。
特に中森明菜さんはその傾向があったとか。
視聴者もセットの手品のような仕掛けにワクワクする。
デザイナーである三浦さんは、何度も曲を聞き、自分の解釈やイメージをセットに盛り込んでいたとのこと。
あの番組は歌手・視聴者・デザイナーの共同作業となっていたのだね。
当時のセットの写真もあるよ。





2008年には、三原さんのセット模型(セットを作る際にイメージを関係者で共有するためのもの)を紹介する展示会が昭和女子大学で開催されたらしい。
このセット模型は、通常はキチンとした倉庫に入れられているのではなく、都内の昭和の香り漂う木造アパートの一室を借りて保管されているんだって。





毎週の番組で、毎回違うセットを作るって、どんなに大変かと思う。
本番の翌日にランクが出る。イメージ作って2日。模型や下絵を作って2日。セット制作に2日。
で、本番。
中継で歌ってもらう人のセットは要らないし、バンドの前でフツーに歌わせる歌手もいるから、毎回作るセットは4〜5曲分とか?
1日分のセット予算は、800万円程だったらしい。(高!!)
ランクが高い人にはお金もかけて豪華なセットを作る。
良い順位をとれば、こんなに手厚くしてもられるという自負を歌手に与えることにもなるんだね。





似た番組は出来ても、セットに手をかけるこういう番組はそれ以降ないらしい。
音楽を視覚的に楽しませる仕事の話。
おもしろいよ!