ノーベル平和賞で世の中がわかる

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ノーベル平和賞は、戦争・紛争、貧困、病気などをなくすために尽力した人、もしくは団体が受賞するということは、誰もが知っているけれど、どんな内容に対して与えられるかには、時代がよく反映されているのだそうだ。
この本では、111年の歴史を5つに分けて、現代から過去に遡っていきながら、受賞者と功績を紹介。
その際、受賞の背景や授与への疑問視などにも触れるので、その時その時代の様子が伝わってくるよ。
また、その時の日本の出来事も書き添えてある。
受賞に適した人がいなければ、「授与なし」という年もあるんだね。




2009年オバマ大統領の受賞は論議を生んだそうだ。
核廃絶」を訴えたからだけど、まだ何も実績を生んでいなかったから。
こういう「期待」を込めた授与というのもあるんだね。


なんとヒトラーが候補者になったことがあるらしい。
「平和を守ってくれてありがとう」という褒め殺し的受賞で、暴れさせないようにするために。
もちろん、却下されたけど。



他のノーベル賞は、スウェーデンの王立アカデミーが選考するのに、平和賞だけはノルウェーノーベル平和賞委員会が選考する。
このノルウェーが選考することになった経緯そのものが、「平和賞とは」につながる感じ。
スウェーデンからの独立を求めていたノルウェーに対し、それを認めないスウェーデンは武力を行使してでも阻止しようとしていたのだけど、ノルウェー議会は平和な解決を模索。
このノルウェー議会の調停能力の高さが評価され、平和賞選考を委ねられたのだとか。
選考委員会は、政府や国会からも独立した存在なんだね。
そんなわけで、中国の劉暁波が受賞した時に中国政府がノルウェー政府に抗議したのは、ちょっとおかしいことになるのだそうだ。



そういえば、平和の象徴のようなガンジーは受賞されていない。
理由は、スウェーデンの英国への配慮だとか。
第二次世界大戦中、ドイツにやられていたスウェーデンが英国に保護され、国王は亡命までさせてもらった恩がある。
だから、英国によるインド支配に対する抵抗をしたガンジーを選べなかったとか。



えええ?



ノーベル平和賞は本人が亡くなった後でも授けることができるんだね。
ずっと独身だったノーベルが憧れていた女性ベルタ・フォン・ズットナーさんが平和運動家だったから、この賞の設立にいたった(遺言に記された)という説もあるらしいよ。




こんな賞が不要になるくらいに地球が平和になればよいのにと思う一方で、人間から争いをなくすのは永遠に不可能なのだろうなとも思う。これからの受賞者はどんな功績の人になるんだろう。