スパイス、爆薬、医薬品〜世界を変えた17の化学物質

スパイス、爆薬、医薬品 - 世界史を変えた17の化学物質

スパイス、爆薬、医薬品 - 世界史を変えた17の化学物質

社会や歴史を変えた小さな分子たち。
今では、その存在が当たり前になっているけど、産業革命や戦争を起こしたり、男女の役割を変えたりしてきた。
本には、化学構造式も遠慮なく登場して化学的な説明もされるので、私などは一瞬固まるのだけれど(笑)、驚きのエピソードも盛りだくさん。
人間達が困り果てたその時に、どんな風に登場し、旋風を起こしていったか。
ビタミンC、ゴム、砂糖、綿、ナイロン、幻覚剤、ピル・・・


目次の一部やエピソードの一端を紹介すると、こんな感じ。



1章「胡椒、ナツメグクローブ大航海時代を開いた分子
賞味期限なんて言葉もなかった時代では、味が変わっていたり臭うものは、香辛料(スパイス)でごまかして食べちゃっていた。
腐敗を遅らせてくれるしね。
辛いもの好きな人は、求める辛さがエスカレートしていくようだけど、これにはちょっと理由があるみたい。
辛さって、脳内にエンドルフィンを分泌させるから、ゆったりとした満足感・快感を得られる効果が得られて、中毒みたいになるんだね。






2章「アスコルビン酸」オーストラリアがポルトガル語にならなかったわけ







5章「ニトロ化合物」国を破壊し山を動かす爆薬
火薬兵器が作られ始めた頃、火薬粉末はアルコールと水を混ぜた液で練り固めてから砕いたそうだよ。
この「アルコールと水」の代わりに、しばしば火薬工場で働く男性の尿を使ったらしい。
特にワインを大量に飲む人の尿は良い火薬ができるとされ、聖職者のも優れていると信じられていたとか。







7章「フェノール」医療現場の革命とプラスチックの時代
19世紀では、象牙の需要が急増した。
櫛、刃物類、ボタン、チェスの駒、ピアノの鍵に使うため。
象が減少したことで、とても心配したのはアメリカ。
ビリヤードが大変な人気だったから。
球の最高級品は50本の象牙からわずか1個しかできないというものだったそうだ。
とうとう象牙がとれなくなってきて、代替品として作られた人工材料がセルロイド







8章「イソプレン」 社会を根底から変えた奇妙な物質
ゴムのお話。
ガムは先史時代から、あったらしい。
古代ギリシャ人は、樹脂を噛んでいたんだって。
ゴムが産業や輸送でどんどん使われるようになると、樹脂からとれる天然ゴムがあっという間に不足するようになった。
特に戦争が始まって、ますますゴムが手に入りづらくなると、ロシアでは、タンポポから天然ゴムを抽出したりも。







9章「染料」近代化学工業を生んだ華やかな分子
今では、街は色であふれているけれど、青を作る苦労、紫を作る努力・・・と1つの色を作り出すのも大変だった。
せっかく作っても、すぐに褪せたり変色したり。

赤の原料は主に2つ。
しかも全く違うものなのに、その化学構造が驚くほど似ているのだそうだ。
1つは、セイヨウアカネという植物の根。
もう1つは、雌のエンジムシ。
スペイン人が征服したアステカから、このエンジムシを持ち帰るのだけど、この原料の正体をずっと他国には隠していたらしい。
この緋色(スカーレット)の染料を独占販売するために。
イギリス兵士のレッドコートはまさにこの染料で染められていたんだね。
食紅にも使われてるよね、たしか?






11章「避妊薬」女性の社会進出を後押しした錠剤
とにかく女性は困っていた。
だから、望まない妊娠を避けられると聞けば、なんでも飲んでいたらしい。
ヤナギやポブラの葉、クモの卵やヘビが入った混ぜ薬。ラバの腎臓。
7世紀の中国では、水銀。←避妊どころか、本人も死にます
「避妊薬」だけど、最初は逆の目的のために作られていたものだったり、その過程が波瀾万丈。
ステロイドの研究をしてきたラッセル・マーカー博士も型破り。







12章「魔術の分子」幻想と悲劇を生んだ天然毒
14世紀半ばから18世紀の終わりまで続いた魔女裁判
悲惨な刑を受けて殺されていった女性達。
これは社会的ヒステリーと言えるけど、その前に化学的な根拠といえるものがあると説明があるよ。





13章「モルヒネ、ニコチン、カフェイン」アヘン戦争と三つの快楽分子







化学が苦手でも、世界史としても楽しめる〜。