昆虫の発音によるコミュニケーション

昆虫の発音によるコミュニケーション (環境Eco選書)

昆虫の発音によるコミュニケーション (環境Eco選書)

昆虫には、自然による究極のプログラミングの結晶じゃないかと畏敬の念を持っているよ。
無駄のない機能。
行動全てに高度に仕組まれた、子孫繁栄のための理由がある。
映画「ライフ」にもいくつか登場してたなあ。


この本では、音(振動も)という視点で、昆虫たちの驚異的な生態を描いている。
昆虫全体では、発音するものとしないものは半分ずつくらいの割合だそうだ。
幼虫やサナギが発音するものもいる。



すばらしい完成形と思っていた昆虫だけど、もともと音は、体の作り上、偶然発せられていただけだったのだって。
バッタの後脚と腹部、コオロギの左右の前翅のように、動きによって、2か所が摩擦し合うことで勝手に鳴っていたものが目的を持つという変化を遂げたと。
へえええ。


発音するだけでなく、振動を感知する能力もすごい。
地表下10cmに生息するキリアツメゴミムシダマシの仲間は、風で生じる微弱な振動を感知し、風に吹き寄せられたえさを食べるために出てくる。
ナノメートルレベルの振動の変化が分かってしまうなんて。


カミキリムシのように、びっくりすると硬直してしまう昆虫がいるけど、あれは、自分の動きの振動によって、敵に察知されないための術なんだね。
単なる死んだフリにしては、頑な感が半端じゃないなと思ってたんだよね。
ほんとに命がけでじっとしていたわけで。
カミキリムシは、産卵するための衰弱した松の木を見つける際に、そういった松が発する微小な高周波振動や大きい低周波振動の双方を感知し、更に松の揮発成分に誘引されてやってくるという。




シジミチョウは、アリの巣の中で幼虫の時期を過ごす。
アリたちがこの幼虫を大事にするのはなぜか。
巣が荒らされたら、自分たちの幼虫を後回しにして、チョウの幼虫を安全な場所に移動させる。
餌が足りなくなってきたら、自分たちの幼虫を殺して、チョウの幼虫に食べさせる。
なんと、シジミチョウの幼虫は、「私は女王アリよ」というシグナルを真似て、発することができるらしい。
だから、アリたちは、このチョウを女王アリのごとく厚遇するのだ。




音や振動は関係ないけど、ミツバアリバチは、メスにしか武器となる針はないのに、オスは敵に捕まりそうになると「刺すフリ」をして敵を脅かす。
昆虫って、「フリ」がかなり高度だなあ。
ただのプログラムの産物って感じじゃなくなってきた。




蛾もすごい。
蛾は1億9000万年前には、もういたらしい。恐竜たちを見ていたんだね。(ジュラ紀
その頃の蛾には、音の機能はなかったけれど、5000万年前に天敵コウモリが出現してから、進化したそうだ。
反響定位で獲物の正確な位置を察知するコウモリ。
その機能を逆手にとって、蛾はコウモリの発する超音波を察知できる耳を得た。
チョウやガの85%近くの種がこの耳を持っているとのこと。
そういえば、チョウのあのヒラヒラ飛びもすごいよね。
蛇行どころの飛び方じゃないよ。方向音痴の酔っぱらいみたい。
あれはたしか、まだ未解明だったような。



バッタは、ある期間、鳴いていたのに鳴かなくなっており、また「耳」が現れた時期もあったけれど、現在では腹部第1節の鼓膜がすごいらしい。
この鼓膜に気付かれないように、バッタに近づくのは困難だそうだ。



カブトムシのサナギも振動を発してるし。



発音や振動の役割は、わりとよく知られているかな。
・配偶行動(オス・メスを呼び寄せたり、種を見分ける)
・集団の形成(仲間を呼び寄せる)
・天敵などを脅かす警戒シグナル