クルマが先か?ヒコーキが先か?

同じ乗り物でも、「車と船」とか「鉄道と飛行機」といった関わりはそんなに深くないけど、車と飛行機は同じメーカーが作っていたりして、歴史的にもとっても関係が深いみたい。
サーブやBMWの会社のマークも飛行機からきているし。
飛行機には、軍事的な必要性があって発達してきたという経緯もあるけど、この2つは人間のモノづくりを象徴していて、トンデモナイ発想が詰まっているように感じるから、好き。




サーブの試作車は、ボンネットもサイドも盛り上がっていて、全身で空気抵抗と闘う気満々。
ブリストル404には、ちゃんとライトがついているのに、その間にも意味不明なライトがいっぱい。






航空機メーカーが車を作り始めた逆で、車メーカーが飛行機作りに精を出し始めたりもする。
高級車メーカーはお金があるから、良い技術者もいっぱい抱えられるし、開発費も出せちゃう。
フォードだって、飛行機を作っていたんだね。
アメリカ国民をフォードの車に乗せてしまったように、今度は飛行機に乗せちゃおうとがんばったらしい。
でも、出来上がった飛行機に乗ったテストパイロットの感想は、



「死人が出ないうちに、こいつは電動ノコギリでぶった切った方がいいと思います。」





だったらしいけど。






また、凝り性のドイツは、考えに考えて、練りに練って、あっちにもこっちにもこだわって、完璧を求めたら・・・




変わった車や飛行機ができてしまう。




偵察機だって視界をよくするために、機体が窓だらけの上、非対称型だったり。
すばらしい性能の飛行機もできていたのに、イギリスのシンプルでそんなに馬力のない飛行機にあっけなくやられてしまったのは、飛行機の性能のせいじゃない。




作る作業に凝ってる間に、どんどん爆撃されちゃったから。




しかも、200種以上の軍用機を作ってしまって、部品補給も整備も大変。
戦争中にやるモノづくりとは思えない。




そんな各国・各社の車や飛行機作りの山や谷を軍事評論家の著者が、いじる、つっこむ。
著者の精緻なイラストとコメントに感心と共に吹きだしてしまう。





イタリア車もつっこみを免れない。
スピードメータを見たら、990km/hになっていたとか、雨漏りが半端じゃないとか、壊れ方が尋常でないところにサソリのエンブレムなんてつけてロマンティックだから、素敵すぎるよ。
著者も、イタリアらしくて感動するのは、レースで、





ピットアウトでリアホイールが外れるとか、クラッチつないだ途端にドライブシャフトがねじ切れるとかで、あと一歩の勝利がもろくも消えていく瞬間だ。




と。
ひどい。
ちなみに、日本はドイツ製の爆撃機を買いたいって言ったのに、ナチス・ドイツ政府に断られて、フィアットの飛行機を買っちゃった。





飛行機のエンジンに名前をつけるのは、イギリスと日本くらいだったらしい。
他国は、そっけなく型式番号のみ。
日本のメーカーも時代に合わせて変わってきた。
中島飛行機もあるけど、戦闘機「紫電改」(養毛剤ではない)を作っていた川西が今は、トラックのボディや荷揚げ装置などを作っていたりするんだね。






そうだ、飛行機と車が合体してしまえばいいじゃないか!




という現代では冗談みたいな発想ももちろん生まれたそうで。
タケコプター的に、車の上に主翼がついてる代物が作られた。
道路を車として走れるように、翼が取り外せたり折りたためたりする工夫を凝らしたらしいけど、車と飛行機を別々に持っていた方がよっぽど楽だということに気付いたとのこと。



操縦者以外の乗客が後ろ向きに乗る飛行機もある。
一般的に乗りものは進行方向に向かって座る。
そういえば、電車のつり革だって、最初は進行方向に向かってつかまるような向きでついていたらしいよ。
でも、ロッキード等の大型の軍用輸送機だったりすると、人をたくさん乗せるとはいえ、狭い滑走路に急減速で着陸する可能性もあるそうだ。
そんな時を想定すると、人間の体にも背骨のある背中側に加速度による重力がかかった方が、お腹側で内臓にその重力を受けるよりも良いということらしい。
逆に後ろ向きに座っている場合に発進する時は、すさまじい加速を体感すると、体だけが先に機体と共に進み、自分の意識が置いていかれているようなプチ幽体離脱感覚に陥るそうだ。




街の自転車屋さんに寄った時、職人気質のおじさんが自転車はもうモノ作りとしては極められているから、附属品などで展開していくしかないんだと言ってた。
車や飛行機はどうなんだろう。