糸とはさみと大阪と

糸とはさみと大阪と

糸とはさみと大阪と

突然、小篠綾子さんが著者と言われても、私はピンとこなかっただろう。
パラパラとページをめくって初めて知った。
世界的デザイナーのコシノヒロコ、ジュンコ、ミチコ3姉妹のお母さんである。


自叙伝なのだけど、目線は「子育て」というところがおもしろい。
彼女自身、デザイナーであり、自分で服を作る人で、この母があったからこそ3人のデザイナーが生まれた。
岸和田出身で、洋裁の商売もそこを拠点にしている生粋の大阪女。
決して最初から才能を発揮して成功の道ばかりを歩んできたわけでもないようだ。
和服から洋装へ移る日本の流れにうまく乗れたのはたしかだけど、もう、ドタバタで。
機械での大量生産でなく、ミシンを踏んで作るわけだから、どんどん増えていく注文についていくのが大変。
つまり子育てしてる場合じゃないのだ。
でかける時も、子ども1人忘れていたり。
デザイナーで、人を美しくするのが仕事なのに、自分はひどい身なりだったりで、ご主人が浮気してるのに気付かなかったりも。


娘達は、母親が働く姿を見て、



絶対、こんな仕事イヤやわ。



と思っていたらしい。
3人それぞれがデザイナーになっていく過程もおもしろいね。
三女はボロボロの制服で青っ洟が服についてる(高校生まで)状態だったり、しかもそれに母親が気付いていなかったり。
おそろしく個性の違う3人は、助け合いつつも、ライバルでもある。


決して成功話ばかりではありません。
え、そんなこと書いていいの?的な。
でも、きっと、隠し事ができない性分なんでしょね。