「ぶらんこ乗り」などいしいしんじ3冊

ぶらんこ乗り

ぶらんこ乗り

いしいしんじの作品を立て続けに3冊読んだ。
中学生の頃、ヘルマン・ヘッセの「車輪の下」を読んで、底のない暗さを知ってしまった瞬間を思い出した。
この3冊の本は、ずっと暗いわけじゃないし、噴き出し笑いをしてしまう場面もあるのだけど、暗さが「車輪の下」のものと種類が似ているような気がする。
衝撃な事件は起こるけど、どちらかというと、何も起こっていない間の文章がピーンと張った空気を持続していて怖い。
むしろ、事件が起きてくれると、ほっとする。
泣ける場面になると、緊張がほぐれて安心する。




場面より少し離れたところから、情景や登場人物の行動を描いていくのだけど、激しい感情やセリフも妙に透明で、不安になる。
だから、自分から本の中に踏み込んでしまうんだろな。
特に「ぶらんこ乗り」は、悲劇の終盤に加速していく中でも、読者が翻弄される感がある。
ファンタジックな味付けがかえってこわいよ、哀しいよ。





絵描きの植田さん

絵描きの植田さん

「絵描きの植田さん」は実話をもとに書かれているそうだ。
植田さんは、本が書かれた2年前にアパートの仕事場でイーゼルを動かしている時にストーブの不完全燃焼が起こり、聴力のほとんどを失った。
その時、傍のソファで眠っていた女性は亡くなってしまった。
そして、その3カ月後に画材一式だけを携えて、都会を離れ、高原の一軒家は移ったのだそうだ。
この本は、高原での植田さんのお話。
植田さんの挿絵もある。



プラネタリウムのふたご

プラネタリウムのふたご

プラネタリウムのふたご」は、この3冊の中では一番ファンタジックな感もあるけど、やはりずっと正体不明の緊張感が続く。銀色の髪の男の子二人の物語。