ロードサイド・クロス

uiui2011-04-02

どんでん返しの展開が好きな人には、とってもオススメ。
インターネットの世界のサイバーいじめが発端で、殺人事件や未遂が起きてしまう。
秋葉原の無差別殺傷事件でも、インターネットの掲示板などが背景にあるようだけど、この本もそう。
発端は、「チルトン・レポート」というブログ。
社会事象について歯に衣着せぬストレートな指摘をする。
しかしながら、しっかりと取材と分析をした上での発信なので、若年層から知識層まで幅広い読者がおり、社会への影響力ももつほどになっている。
このブログで指摘された事象がきっかけで、匿名とされた上で叩かれた男子高校生がいる。
その青年は、「キモイ」「オタク」「ヘンタイ」・・・とサイバーいじめに遭い、いつの間にか素性が明かされ、プライベートな生活まで暴露されていくのだ。
ブログ炎上の末、彼の家に投石や落書きをする者も現れる。
この青年は、本当にネットで作られた像と一致しているのか?




事件は、その青年をブログで叩いた人間が殺される(または未遂)ことから始まるが、被害者のターゲット条件はどんどん拡がっていく。
匿名というオンラインの性質、そしてプライバシーの保護の観点で難を極める捜査。
この事件を担当するのがキャサリン・ダンスという尋問の天才である捜査官だ。
なぜ天才かというと、彼女は相手の意識的に作られた表情や無意識なボディランゲージを読み取ることで、嘘と真実を見分けたり、真の目的を見抜くことができるのだ。その手腕で、捜査が誤った方向へ進むのを修正し、捜査の可能性を広げていく。
それは、仕事面だけに発揮されるのではなく、愛する家族や友人、上司との関係においても有効なので、時にキャサリンは悲しんだり苦しんだりすることになる。
むしろ、その才能が彼女の弱さを引き出す道具になってしまっている時もあったりするので、「正義の味方、勝利!」だけでない複線多数の展開。
細やかな心象描写や登場人物同士の気持ちのかけひきがベースとなっているので、「あぁ、おもしろかった」だけで終わらず、後味がちゃんと残るのが良い感じ。




結末には、ほんとに驚きます。
ブログを書く人間の一人としては、こういう事件もありうるなと思ってしまうのだけどね。