風に吹かれて豆腐屋ジョニー〜男前豆腐店ストーリー〜

風に吹かれて豆腐屋ジョニー (セオリーBOOKS)

風に吹かれて豆腐屋ジョニー (セオリーBOOKS)

変わった容器とネーミングで、男前豆腐店のことを知らない人もスーパーやコンビニで手にとってみたことがあるのではないかな。
よせ豆腐の風に吹かれて豆腐屋ジョニー」。
他に元祖「水もしたたるいいトーフ 男前豆腐」「喧嘩上等 やっこ野郎」「お嬢」「厚揚げ番長」・・・およそ豆腐らしくないキャラが並ぶ。



「湯豆腐野郎」は、いつものようにお湯に入れちゃいけない。
豆腐の旨みが逃げてしまうから、レンジでチンしてポン酢をかけていただくようにと容器にも添え書きがある。




父親の豆腐屋に就職するも、低価格競争の挙句に倒産していく豆腐業だったけど、これまでの豆腐の常識を破った豆腐を作り、高くても売る姿勢を貫く。
「にがりで固める」という常識に対し、大豆の良さを活かすために「硬くない豆腐でいい」といった感じ。
「そんなの無理や」と言われると、むしろ「できないと思われることを可能にする」ことに燃えるタイプらしい。
昔から変わらない味を守り続ける豆腐ももちろんすばらしいけど、男前豆腐店は進化し続けることを選んだんだって。
あの独特のネーミング、容器ができた物語、キャラクターの説明もあり寄せ豆腐や厚揚げの容器底部にあるくぼみは、自然に水が切れるようになっていて、店先で並んでいる間にもどんどん水が切れて、おいしくなるという発想から。
できた豆腐にパッキングする段階で、豆乳をかけるというのも驚きだ。
この豆乳がかけたポン酢と反応して、表面がゼリー状になることに気付いたのも、販売後だそうだ。
進化。




二子多摩川に出した直営店の経営話もおもしろいよ。
社長の伊藤さんが求めるのは、「恥ずかしさやダサさの中にあるかっこよさ」だ。
セレブの町で、このダサかっこいいイメージがどれくらいなら理解されるかの計算・・・とかね。
スーパーに求められて製品を作るのではなく、自分たちが作りたいものを作っている強みとして、販売店ごとなどに豆腐を少しずつ変えたりするコントロールができるんだね。
男前豆腐店では、社長をはじめ、従業員のほとんどが豆腐を作る人でもある。
財務や営業のノウハウしか知らない者が事務方を背負ったりしないのだそうだ。
だから、豆腐の事を両サイドから話せるし、それまでの常識を打ち破る発想も出てくるのだそうだ。




ここのHPは、意外と不親切な仕上がりだというのも驚き。
いちいち商品の説明や食べ方も販売店も書いていないらしいけど、この本には材料や製法だけでなく、製品の生まれたきっかけや研究の苦労、「タモツ」などのキャラの意味不明なほど詳細な紹介も。


お客さんに探してもらったり、自分の舌で感じてもらったり、豆腐屋が思いもしなかったレシピを思いついてもらったりというのを共有したいそうだ。
やわらかい豆腐をうっかり鍋料理に入れてしまったお客さんから、豆腐が熱で半分溶けてトロリとなり、予想もしなかったおいしい鍋になったとか。



「成功物語」じゃなくて、一生懸命に伊藤さんの世界観を訴えてる。
モノを創る楽しさがガツンと伝わってくるよ。