図解メイド

図解 メイド (F-Files)

図解 メイド (F-Files)

日本では、語尾に「喫茶」がつくことが多い、メイドや執事。
すっかり大衆文化の象徴みたいな存在になってしまっているけど、実は、この「メイド」という身分は、主にイギリスのヴィクトリア王朝時代を支えてきた存在なのだ。
その頃、イギリスでは社会や政治に大きな改革があり、貴族や上流階級、労働者階級の生活が激変した。
この「メイド」という身分を詳しく調べると、時代が浮き彫りになる。
本では、使用人という身分の始まりから、雇われていた階級の家の造り、ヴィクトリア朝の生活(照明、暖房、台所用品、娯楽、ドール・ハウス・・・)、雇用主との関係、使用人の1日の流れ、給料、また使用人をとりまく他の職業について・・・と幅広く紹介されていて、まるで18世紀のイギリス人生活マップみたいだ。
男性使用人に課税される法律ができたため、女性使用人が増えたなど、社会の動きと照らし合わせて書かれているのもおもしろい。



貴族や上流階級では、自分で働いて生活費を稼ぐこともなく(身分による報酬や土地収入がある)、特に女性は、家事も身の回りのことも「何もしない」のがステイタス。
それらのことは、すべて使用人にやらせることが、「かっこいい」のだった。
たくさんの使用人を雇っているほど、また使用人のお仕着せ(制服)が立派なほど、格が上がるだのだ。
使用人文化の全盛期には、使用人のバイブル的存在の「ビートン夫人の家政読本」や「召使い大全」などという本が人気となったらしい。






一口に使用人といっても、さまざまな役割分担がされており、使用人の中でも上下関係がはっきりしていて、組織となっている。
給料やお仕着せも主に働く部屋も違う。
なんだか武士や大奥の世界に似てるなあ。
ということは、お互いの身分同士で牽制して緊張感を持たせ、主人に対する不満が集結しないような意味もあったのかもしれないね。
男性使用人の種類は、家令・執事・従者・従僕・料理長・御者・園丁など。
女性使用人は、家政婦・女家庭教師・小間使い・料理人・乳母・客間女中・家女中・台所女中・子守女中・洗濯女中・雑役女中など。
長くても20年ほど働いくと、貯蓄したお金(退職金がもらえる場合も)で商売を始めて、第2の人生を始めることが多いそうだ。
でも、貯金をしなかったり、素行が悪くてクビになってしまうと、最悪の生活環境の救貧院に行ったり、犯罪者や娼婦になって人生を終えるということも少なくなかったらしい。



使用人の種類によって、採用条件も結構違っていて、身分の高い使用人は、それなりに高い階級の家から来ていたり、雇用者と同じくらいの身分の人が修行のために来ていたりもするようだ。
女家庭教師は、中流階級から上流階級出身の人が多く、採用条件は、





美人でないこと。




家人の恋愛対象になることを避けるためだったとか。
この家庭教師は出身階級が高いし、立場的にも中途半端なので、家庭内で孤立してしまい、自殺する人もいたそうだ。



客間女中(パーラーメイド)は、直接お客様に接する機会が多いので、華美な制服を身につける。
採用の条件としては、外見が良く、背が高く、手がきれいであること。


男性使用人の従僕は(フットマン)は、給仕・ボディガード、手紙の配達などの仕事をするが、採用条件は、ハンサム・背が高い・体力があるというのはなんとなく分かる。
もうひとつの条件、それは、


ふくらはぎが美しい。




給料に影響するほど重要ポイントだったらしい。
制服がブリーチズ(半ズボン)と白ストッキングだったからね。



「メイドと犯罪」という項目では、男性使用人・女性使用人が雇用主との関係において、どのような犯罪に巻き込まれたか、もしくは犯罪を引き起こしたかを実例を挙げて紹介する。
雇用主にしてみれば、どうしても「家のものをくすねるのではないか」といった疑惑を持ってしまうのも分かるけど、「被害妄想」により執事を殺害した事件もあったそうだ。
また、女性使用人への虐待。
逆に、ケイト・ウェブスターという女性使用人が、雇用主を殺害した上に切り刻んで煮込み、更に雇用主になりすまして家具を売り払おうとした凶悪事件もある。
「腸チフスメアリー」の話も怖いよ。
チフスに罹っているのに気づかず、料理人をしていたことで、職場に病気が蔓延。
指摘され、隔離までされたのに、メアリーは名前を詐称して料理人を続けたために、またチフスが拡がったのだ。