夜中に台所でぼくはきみに話しかけたかった

夜中に台所でぼくはきみに話しかけたかった

夜中に台所でぼくはきみに話しかけたかった

谷川俊太郎さんの散文詩集。
いくつかの群に分かれていて、例えば、その中の「夜中に台所でぼくはきみに話しかけたかった」にある14の詩は、1972年5月某夜に即興的に鉛筆書きされたものや同年6月26日に音読されたものが、活字による記録及び大量頒布のOKを得て本に掲載となったらしい。


究極の自己追求やナルシズムをアウトプットしてくる詩は、私には重すぎて敬遠しがちなのだけど、ここにある詩は、言葉になった瞬間や文字に変換された直後の自分の感性を冷たく突き放すような切なさがあって、ギョッとする。
「詩を絶対に美しくなんてするものか」くらいに、書くという作業と戦っているようにも思える。
谷川さんの心からこぼれる言葉なのだから、とても主観的な感性に違いないのに、人間が生きることの科学やしくみを感じてしまうのが不思議。