作家のおやつ

作家のおやつ (コロナ・ブックス)

作家のおやつ (コロナ・ブックス)

著名な作家たちがどんなおやつを食べていたかを紹介。
おやつって、究極の日常でしょう?
作家が、作家になるまでの成長過程に刻まれた記憶でもある。
そして、文章が生みだされる瞬間に、そばにいたり、お腹や心を温める役目をしているかもしれない存在。
作家のお気に入りのおやつは、作品に登場したりするんだね。



有名作家だからって、高級なお菓子ばかり食べているわけじゃなくてね、手塚治虫氏はチョコレート。明治製菓の板チョコ。
手塚氏の死後、数年経ってから、長女のるみ子さんが机の引き出しを開けてみたら、食べかけのチョコレートが出てきたそうだ。
「眠気覚ましの興奮剤として乱食していたのだ」と当時の手塚氏は言っていたらしい。




掲載されている作家たちのスナップ写真も素敵でね。
執筆していた書斎も紹介されていたり。
また身近にいた方々の回顧録やエピソードも寄稿されていて、作家の日常を伝えてくれる。おやつを通して、作家の素顔が見えてくる。(作家にしてみれば、あまりうれしくないのかもしれないけれど)



三島由紀夫の居間は、インテリアにかなりこだわっていて、ソファにくつろぐ氏の姿に、写真なのになぜかちょっと緊張してしまった。
三島氏は、「作家は食をあれこれ語るべからず」といった姿勢だったそうだ。食事の内容や味の感想はまったく残さなかったとのこと。
でも、「カドのプチ・ガトー」は配達を頼むほどだったし、伊豆下田の日新堂菓子店のマドレーヌは、夏の滞在中は週に1度は訪ねて、ホテルに来るお客用にもどっさり買い込んだとか。




森鴎外氏の饅頭茶漬けは、豪快。(参照写真も掲載。唖然)
4つに割った饅頭が、お茶漬けの上に乗っているのだ。
「甘いもの好き」というだけでなく、細菌学をやっていたため「熱湯消毒」も兼ねていたらしい。




小津安二郎氏は、グルメ手帳(本人が名付けたわけではない)をつけていた。
名店の名・住所などをジャンル別に記録。しかも自分で書いた地図までついてる。
神田のあんこう鍋屋「いせ源」とかね。
神戸のユーハイムバウムクーヘンもメモしてある。
そして、映画「小早川家の秋」では、原節子さんがこのバウムクーヘンをお土産に持参するシーンがあるらしい。
この小津さん他、数名の作家がお気に入りの「空也の最中」はちょっと気になるなあ。(私は最中はちょっと苦手なんだけど)



他に掲載されている作家は、
開高健檀一雄、市川甍、沢村貞子坂口安吾向田邦子石井桃子川端康成池波正太郎獅子文六澁澤龍彦・・・・いっぱい。



ちなみにこの本のシリーズには、「作家の食卓」「作家の猫」「作家の犬」もあって、夏目漱石の猫や黒澤明の犬などが紹介されているみたい。
おもしろそう。