カフカ寓話集

カフカ寓話集 (岩波文庫)

カフカ寓話集 (岩波文庫)

イソップ物語のような訓話的なものなのかと思ったら、全然。
硬い頭で文字を追うと、物語の最後で「・・・で、何?」と聞いてしまいそうになるほど、奇怪なストーリー。
主人公は、人間ではない?・・・そんな話にも説明はない。
難解ともいえるこの寓話たちの横には、カフカ自筆の絵も収められている。
日記や手紙や職場の用紙にもよく描いていたそうで、「それは何か?」と尋ねられると、「ごく私的な象形文字だ」と答えたらしい。
(上の表紙上部のある人間の体のような絵がソレ)



カフカ伝説」というのがあるそうだ。
名声を欲しがらない謙虚なカフカは、死を前にして、友人に自分の作品を全て焼却してほしいと依頼した。
ところが、これらの寓話を読むと、自分の地位の確立や自己顕示を少なからず意識している像が浮かび上がってくるのだ。
解説者の見解では、「本当に焼却してほしいなら、自分でするだろう。友人が焼却などしないこと知っていてこそ託したのではないか」とのこと。
カフカの謙虚さと背中合わせにある野心が息づいている。