白洲次郎・正子の食卓

白洲次郎・正子の食卓

白洲次郎・正子の食卓

著者は、白洲次郎・正子夫妻のお嬢さん。
名だたる夫妻は、大変なグルメでもあったようだけど、正子さんは全く料理はしない人だったそうだ。
娘である桂子さんは、「母のようにはなりたくない」という想いと、夫に「食わしてやっているのだ」などと言わせるものかという意地で食事作りに取り組んできたとのこと。
だからといって、「ほら、私はこんなにお料理が上手」なんて、高級料理を並べ立てた自慢の本でもない。
「料理が上手でも、好きでもない」とのこと。
いや、もちろん一般家庭で使わない素材やメニューも出てくるけど、きどりや見栄はない。
この本は、結婚して桂子さんが料理をするようになったのをいいことに、白洲夫妻が「あれが食べたい」「これ作って」とリクエスト(しかし、夫妻が材料費を持ってくれるのでラッキー)してくる料理を紹介。
紹介の合間には、こんなエピソードや暴露(?)がちりばめられている。





★京都にでかける父(次郎氏)が母(正子さん)に頼まれてカニを買ってきたら、母は越前カニのつもりだったのに、買ってきたのは渡り蟹。
父は渡り蟹しか知らなかったのだ。
母に罵倒された父は渡り蟹を手にしょんぼりと桂子さん宅にやってきたが、その蟹で父の名誉挽回のために桂子さんが料理本を見ながら作ったのが「蟹と春雨の炒め」。
この料理を持って凱旋したところ、食事時にのぞきにいくと、二人で仲良く蟹をしゃぶっていた。






★フカヒレは、生でなく、水で戻したのを買ってきたら安いから、桂子さんは父から材料費(生が買える金額)としてもらったお金が余るのでいい小遣いになったと暴露。







★ふぐの白子は、鍋にすると取り合いになるので、別にオーブンで焼いて各自に分けて出した。






白洲家の文化や家庭としての姿が浮かんでくる。
楽しくなるよ。
白洲一家の写真もちりばめられている。




次郎氏は、「とても人様には言えない理由で、一切、豆腐を食べない」らしい。
どういう理由なのかは、本に書かれていなかった。
気になるね。





正子さんは、食べることもさることながら器が好きで、「この器に合う料理を作って」というリクエストもあったそうだ。
なので、「味はともかく」器にぴったりの料理なんていうのも紹介されてる。
器についても解説がある。
「服を買って」と言っても渋る父なのに、調理道具は高くても買ってくれたり、自分で庭の木を切って作ってくれたりしたそうだ。



料理名が「筍の焼いたの」。
これは、焼いた筍なのだけど、その焼き方がステキなんだ。
竹林に生えている筍の周りを掘って炭火を入れて焼くとおいしいというのを知り、それでも食べたいという母に対し、父は周囲何メートルの竹が枯れてしまうからと反対。
そこで、桂子さんが皮がついたままの筍を網の上で炭火焼きしたもの。
豪快。