国盗り物語(後編/織田信長)

uiui2010-02-08

国盗り物語 後編 織田信長

国盗り物語 後編 織田信長

前編の斎藤道三が、後編でどう果てるのか。
そこばかり気になっていたので、後編の主役の信長や光秀がイマイチ迫ってこないという困った感じになってしまった。
道三は果てても、造り上げた社会や哲学は、歴史に大きく根を張ったみたい。
確かに「天下」はとれなかったけれど、天下に値するものを得て、しかも後世に残した。
単なる国盗りという名の「ゲーム」じゃないんだなー。
その証拠に、信長や光秀など後を受け継いだ者が、なにかと道三を想う場面がある。
身が滅びた「敗者」に習おうとする。
現代からすれば、天下とり合戦なんて単なる歴史ロマンで、自分の人生に取り入れるなんとことはしないのかな。
私は、短い人生を常に意識して、生き方戦略を練って、そして老いを受け止める生涯には、自分自身が振り返らされるような気がしちゃったよ。
ただただ健康とか長生きだけを考えて、平坦に生きてるよりも濃い感じがしてね。



織田信長明智光秀の話になると、司馬遼太郎の視線がやや淡々としたものになったように感じた。
歴史好きな人にとっては、よく知っている史実も多い内容となっているけれど、観察するかのように人格やクセや思考傾向を細やかに著しているので、体つきや顔が思い浮かぶような気持ちになる。
信長があんなに変人だったとは。時に下品とか変態とか言われそうな。
既成概念なんて、無視する・・・というより最初からそんなものは信長の中には存在しない。まどろっこしい礼儀や作法を嫌悪する。
会話も命令も最小限の言葉しか使わない上に、聞き返したり質問したりすると激昂に遭うので、信長を熟知し、意志を読み取らなくてはならない。
目的は、いなずまのような速さと勢いで達成するし、臣下たちにもそれを求める。
部下は、自分の道具としか思わないほどに潔癖症の実利主義。




こんな上司がいたら、生きた心地がしないね。




実際、信長が外出中だというので安心して遊んでいた女中たちは、急に戻った信長に全員首をはねられた。
怠け者が大嫌いなのだ、信長は。
単に残虐というわけじゃないようで、戦において、自分の兵が村人たちの生活を荒らすのを異常に嫌い、兵が村人の物や命を絶対に脅かさないよう厳しく監視した。
かなり下の階級の臣下が、町人の女性をからかったら「ゆるせんっ!!」と首をチョンである。自分の中の正義にはことごとく忠実なのだ。
また、お金は、軍事や国事に使うため、無駄な贅沢は一切しない。
せっかく京を落としても、都に豪勢な屋敷を作ることもせず、上洛した時には寺に泊めてもらうという徹底振り。(もちろん、屋敷を造らない方が軍事的に有利な点もあったみたい)




対照的な性格の光秀は、ノイローゼになってたのではないだろうか?
本能寺の変にいたるまでの様子やその後の人気取りのための軽薄な処置。
光秀は、有能な軍人ではあったけれど、政治家としては無能であったと言ってしまえばそれまでだけど。




サブ的な登場人物である細川藤孝は、生きる事において真の実力者かも。
みんな自分の時代だけで一生を終えているのに、この人は足利・織田・豊臣・徳川の4代において、しかも会社の顧問みたいな立場で大事にされてるんだよね。
光秀が、藤孝に「信長を殺しちゃったけど、自分は隠居するつもり。摂津と但馬と若さをあげるから、お願い戻ってきて」という哀願の手紙を書いている。
細川藤孝には、拒否されてしまったけど。
この手紙は、現代も細川家に残っていて、後世の者たちの目に触れてしまっている。
切ないなあ。