ヌカカの結婚〜虫たちの不思議な性戦略〜

ヌカカの結婚―虫たちの不思議な性戦略

ヌカカの結婚―虫たちの不思議な性戦略

誰一人いない
草原の真ん中で、
彼女は子供を産むことにしました。

(中略)


それを見届けると、
息子は死んでしまいました。


彼には生まれたときから、
口がありませんでした。
何も食べられなかったため、
餓死したのでした。
「兄との結婚」より





目次だけ見たら、虫の繁殖活動の話だなんて思えないよね。
「男と女に」「100人の求婚者」・・・
「命をかけた結婚」では、よく知られた虫の生態をちょっと切ないストーリーで描いている。
「永遠の絆」なんて、「世にも奇妙な物語」的なコワサまで感じてしまう。
「愛の矢」では、雌雄同体の生き物が主人公。
交尾の際、お互いがある装置を使うのだけど、これが「愛の矢」と呼ばれていたのだそうだ。
ところがよく調べてみると、カルシウムをたくさん含むこの装置。
とてもずるい戦略となる生々しいプレゼントだったのだ。




いやー、生き物好きとしては、ゾクゾクするほどおもしろかった。
人間の隣で、こんなすさまじい生存競争が営まれていたなんて。



地球上の生き物は、なんとかして自分達の子孫を残そうと躍起になっている。
とてもしたたかで、時に残酷。
でも、ユーモラスで、まだまだ説明のできない神秘に満ちている。
著者である森川幸人さんのほのぼのとしたイラストで擬人化し、どの虫の生態なのかは最初はヒミツ。
小さな物語が終わったところで、不思議なストーリーの主人公がどんな生物なのかを「謎解き」として、明かしてくれる。




恋愛映画で泣いてラブコメで笑って、子孫繁栄をおろそかにして呑気に過ごしているうちに、人間は滅びちゃうかも!?