アガサ・クリスティーの晩餐会

アガサ・クリスティーの晩餐会―ミステリの女王が愛した料理

アガサ・クリスティーの晩餐会―ミステリの女王が愛した料理

「犯罪の魔術師」「死の女公爵」などという別名を与えられたアガサ・クリスティー。(1890−1976)
謎に包まれた人生でありながら、食べることが大好きだった人というのは間違いがないようだ。
生きることを楽しみ、おいしいものをこよなく愛する英国女性。
彼女は、自分の作品の中でも「決して人畜無害とはいえない」形で、イギリスの伝統料理を登場させている。
フランス料理とは、食し方も違うし、素材の扱いだって大胆なところはあるけれど、決して劣ってなんかいないわ・・・というのが英国の主張だ。



英国料理には警戒して手を出さないエルキュール・ポアロも、エスカルゴと濃いホットチョコレートに目がない。
ミス・マープルは、ティーカップの底に沈む薬に敏感だ。




この本には、アガサ・クリスティー小説に登場する料理のレシピが紹介されている。
レシピには、小説におけるそれぞれの登場箇所の引用や場面解説が前菜のように添えられている。



「自分の皿の上のプディングを見詰めているポアロの顔に、少々奇妙な表情が浮かんでいるのには、だれも気がついた者はなかった。“プラム・プディングにはけっして手をつけないこと”あの不吉な警告はいったいどういう意味なのだ?」 (クリスマス・プディングの冒険より)




また、全ての料理の写真があるわけではないのだけれど、まるで「毒でも盛られているかのように」美しい写真が掲載されている。
料理だけでなく、英国の風景やアガサ自身の写真もあるよ。



レシピは、きっと日本では手に入らない素材がたくさんあったり、時代にそぐわない味覚や手順だったりして、実用的ではないのかなと思っていたけれど、ちっともそんなことはなかった。
材料もほとんどがすぐに手に入るものばかり。
「ぶどうの葉」なんてものもあるけどね。
ただし、レシピには、法律的な問題があるので、「毒」は記載してないようだ。



アガサの人生についての解説も興味深い。
風光明媚でゴージャスな土地トーキィで看護師をしていたから、毒が身近だったのか?
「大食らい」と言ってもよいほどの旺盛な食欲。
水泳やローラースケートが得意・・・
作品からは見えないキャラにも驚く。
2度目の夫マックスは考古学者で、世界中への発掘調査に同行し、そこでも土地の味を楽しんだようだ。
でも、どんなにマックスが勧めても、お酒やワインは嗜まなかったとか。



目次は、
・犯罪のダブル・クリーム

・トーキィのブレック・ファースト
焼トマト/スクランブルエッグ/ウフ・ベネディクト・鴨のパテ/チェシャー・チーズトースト/ジャムやマーマレード・・・・などなど

・グリーンウェイのご馳走
きのこのクリーム/やまうずらの巣籠り/ミント風味のローストビーフ/イギリス風のスタッフドキャベツ/ヨークシャー・プディング・・・・などなど

エルキュール・ポアロのスイーツ
チョコレートのスフレ/りんごのプディング/「甘美なる死」・・・などなど。

ミス・マープルティータイム

スコーン/バンズ/カナッペ/いちじくのサンドウィッチ・・・などなど

アガサ・クリスティーの世界一周
*旅先での料理:ぶどうの葉の詰め物/イラク風の七面鳥・・・など
*ピクニック用のお弁当:鶏のゼリーよせのタンバル/サーモンのパイ包み/デヴォンシャーのシードルケーキ

・カクテル

こういったカテゴリーになっている。
見ているだけでも楽しいけれど、どれか作ってみたいな。




え?
毒入りかって?


さて、どうしましょうか。