裸の女王様 〜田中真紀子秘書日記〜

裸の女王様―田中真紀子秘書日記

裸の女王様―田中真紀子秘書日記

表紙からすぐに分かるように、女王様というのは田中真紀子氏のことだ。
そして、タイトルから察することができるように、女王様の真の姿を暴露した本。
異例なのは、この本を書いたのが、彼女の公設秘書だった本人であるということ。
秘書を使っている人、そして秘書として勤めている人なら、自分の上司の本当の姿を暴露し、非難するなんて、すでに辞めてしまった人とはいえ、どうかと思うだろう。
逆に著者が非難の的になってしまいかねないはず。
著者は、平成14年に真紀子氏が公設秘書給与流用疑惑でつつかれ、とうとう議員を辞職した前後に秘書をしていた人だ。




読んでいると、だんだんうんざりしてくる。
真紀子氏の非常識ぶりをこれでもかこれでもかと連発してくる。
その内容がまた稚拙なのだ。いくら事実としてもね。
指示していないことを指示したと言い、無理難題を押し付けておいて、できないと「おまえの失態」として、元の会社に自分で報告させる。
電話に出ないくせに、「なぜ電話しない!」と怒る。
電話では、事務所名だけ名乗り、個人名を名乗ることを禁止するのに、相手には必ず名乗らせる。
機嫌が悪くなると、週末帰省を許可しない。
選挙時期には、気に入らないウグイス嬢を途中で車から降ろしてしまう。
意見は許されない。「NO」という返事も許されない。
彼女の秘書達は、地元である長岡市にある田中一族のファミリー企業から出向のような形で東京に送られてくる。
でも、それは、二度とその会社に戻ることができない一方通行の出向なのだ。
途中でいやになって秘書を辞めても、最初から秘書を断っても、「会社を辞める」ことと同義になるのだ。従わない者は斬られるのだ。
身分も給与支給も生活保障もあやふやなまま(住宅もあてがわれず、事務室みたいなタコ部屋に数名で住まわされる)、片道切符の業務に行く道しかない。




こんなものを書いたら、批判を浴びるくらいのことは承知で、著者は書いている。
支離滅裂な指示と、部下の人間性や生活を全く無視した非常識さを毎日克明に記録した日記のようなノートをつけていた。
書くことで、ひどい業務を客観的に見つめようとしていたとのこと。
このノートがこの著書の素となっているのだ。




長岡に生活しながら、田中家のことを悪く言おうものなら、居づらくなるから、これまで辛苦を味わっても、不本意に会社を去ることになっても、悪い風評を流す人はほとんどいなかった。
それなのに、著者は書いた。
メディアの人から「本を書かないか」と誘われたのがきっかけだったそうだけれど、特に田中家への萎縮も感じなかったらしい。
著者が伝えたかったのは、カリスマと呼ばれる日本の政治家の実態がどの程度のものなのかということなのだそうだ。
素晴らしい公約を掲げ、奇抜な言動や行動を繰り広げる政治家の真の姿は、裸じゃないか。みんなよく見て、気付いて欲しい・・・そういういうことらしい。