水の肌

松本清張の短編集。

・指
・水の肌
・留守宅の事件
・小説 3億円事件「米国保険会社内調査報告書」
・凝視


どれも書かれた時から、随分時代が変化しているにも関わらず、あまり古さを感じないのが不思議。
「今だったら、こんな犯罪、ありえないよねー」とは、あまりならないのだ。(本書は、昭和53年発刊)
一般常識的に考えて、動機が分からないと言われる事件も、犯人の心の中に潜り込んで捜査すると、犯人にとっての必然性として浮上する。
「この事実(人)さえなければ、私は幸せになれるのに」という思い込み。
やっと幸せをつかみそうになった時、踏み固めて歩んできたはずの過去が、泥沼になったように引きずり込もうとする。
誰にだって、隠したい過去はあるかもしれないけれど、よりによってあの過去が、現在のような顔をして、幸せを阻もうとする。



この過去を抹殺するのは、必然だ。



「指」は、女性と女性と男性の関係。
この妙な異性関係が、時を経て、犯人の脅威となっていく。



捜査方法は、どんどん科学的になって、技術が進歩しているそうだけれど、犯罪を犯すのはやはり人間。
あくまでも、行為や動機はアナログなのだなあ。