夢の女

夢の女 (1951年) (市民文庫〈第48〉)

夢の女 (1951年) (市民文庫〈第48〉)

立派な藩士だった父が時代の変化で落ちぶれて、そこの娘が家族を守るために身体を張る。
女中奉公から商人の妾、娼妓、待合の女将。
家族を守ることになんのためらいもなく、自分が堕ちていくことにも「妥協」ではなく、「覚悟」で挑む。
かといって、悲観的なヒロインにはならず、自分が築いた生活の中にささやかな幸せを見出し、充足する才能を持ち合わせるところに、私は「生きる事の名人」と称したいな。
自分を可愛そうがらない一途な姿の一方で、歩んできた人生に心休まるところがないこと、女として真に満たされていないことが、主人公自身もはっきりと理由が分からないまま感じられてしまう置き所のない哀しさ。




女性でなくとも、まっしぐらに生きてきた人生をふと振り返った時に、「これでよかったのだろうか」「間違っていたのではないだろうか」とよぎる不安。
読まなきゃよかったと思うタイミングの人もいるかも。
現代でいう「負け組」になるかもしれない女性を叙情的に書いている。