怖い絵
- 作者: 中野京子
- 出版社/メーカー: 朝日出版社
- 発売日: 2007/07/18
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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先に「怖い絵2」から読んでしまったのだけど、やっと「1」が手に入った。
「2」に比べて、殺戮シーンなど、見た目がすでに怖い絵が多い・・・
ドガ「エトワール、または舞台の踊り子」
中学生の時、美術の授業で好きな絵を模写するという課題が出た時、この踊り子の絵を描いたような記憶がある。
だけど、オペラ座が私の思い描いた世界とかけ離れていることをこの本で
知った。
桟敷席は、上流貴族たちが定期予約などして確保しており、社交場となっていた。
飲食はもちろんOKで、時にはそこでお見合いをしたりと、それこそカーテン閉めれば何をしても構わない。
それに、そういった桟敷席を持つ紳士たちは、楽屋や舞台袖に上演中だって自由に出入りできる権利を持っていたらしい。
著者の言葉を借りると、オペラ座は、「上流階級の男性たちの娼館」。
そして、娼婦にあたるのが、その踊り子たち。
現在、芸術という分野にあるバレエが、当時どのような地位にあったか。
そして、この踊り子がどんな想いで舞っているか。
そんな怖さ。
ボッティチェリ「ナスタジオ・デリ・オネスティの物語」
タモリさんの「世にも奇妙な物語」が好きな人は気に入るかもと思ってしまう不気味な構想。
4枚組のこの絵は、だんだん場面が進んでいくのだけど、そのわりに進行がヘン。
殺されて、しかもその後にひどい仕打ちをされてるのに、次の絵では、あれれ?
しかも、残酷。
その根底にあるのが、愛情だというのがまた怖い。
ゴヤ「我が子を喰らうサトゥルヌス」
もう見てられない。(でも、本物の絵を美術館で見たような気もする)
自分の子どもを食べる父親。
他にルーベンスなども同じテーマを描いているけれども、ゴヤのは、もう違う世界にいっちゃってます。
美術版「デビルマン」。
子を食べることになった経緯と食べずにいられない心理がとても怖い。
ダヴィッド「マリー・アントワネット最後の肖像」
簡単な素描は、実際にアントワネットが絞首刑場に連れて行かれる時のスケッチだ。
公の前にいる時は、常に凛とした姿勢を保つよう育てられたためか、周囲に対する軽蔑ともとれる毅然とした態度。
だけど、とても醜く描かれている。
芸術家って、なんとなく、孤高の精神を持ち、世俗を見極めるような目を持っているかのようなイメージがあるけど、このダヴィッドは、最高の技術を持った「こうもり男」らしい。
「おちぶれた」者への容赦ない侮蔑と悪意が満ちているこの絵。
デヴィッドは、常に権力のあるものに仕え、危なくなると捨てるということを繰
り返してきたとのこと。
権力に対する崇高な誓いをたてても、新たな独裁者が登場すれば、簡単に反故にするダヴィッド。
ナポレオンが失脚して、とうとう亡命先で亡くなるが、その時何を考えたか。