怖い絵2
- 作者: 中野京子
- 出版社/メーカー: 朝日出版社
- 発売日: 2008/04/05
- メディア: 単行本
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今日は、太宰治の命日「桜桃忌」だと仲間が言うので、数名で通勤途中にある禅林寺にお参りしてきました。
森鴎外のお墓もあります。
鴎外の遺言書→
でも、桜桃忌は19日でした・・・・
人が少なくてよかったけど。
いえいえ。怖いのは、お墓ではありません。
亡くなった方ではないのです。
やはり怖いのは、生きてる人間ですね。
歴史的な名画たちが提示する暗号を解いていきます。
絵画たちは、ぼんやり眺めるだけだと、平面のままです。
そして、じっくり見てみると、計算しつくされた構図と技術、情緒、動かないのに溢れ出る躍動感、美しさ・・・しかも、鑑賞する者の目が、実は世紀を超えて画家に誘導されていくことに気付きます。
そんな絵画には、背筋が寒くなるような怖さが秘められていることがあるのです。
怖さには、人間性の欠落・嫉妬・非情・残酷・グロテスク・・・色々あり、絵に登場しているものが発していることもあれば、時代が背景的に持っていたものもあります。
見てすぐに目をそむけたくなる怖い絵もあれば、背景を知らなければ怖さに気付かないものもあります。
(以下、ややネタバレ)
「ラス・メニーナス」ベラスケス
絵の主人公と思われるかわいらしい少女が、実はそうではなく、脇役然として隣にいる小人症の成人女性の背負った人生が発するものの重みだったり。
その時代では、「慰み者」として障害のある者をペットのように側に置くのがステイタスだったのです。
障害を持った者は、健康な奴隷よりも高値で取引されたとか。
信じられない時代背景が、さらりと主眼をかわして、絵の中に存在しているのです。
少女の未来図についても述べられており、また別の怖さを説明しています。
「精神病院にて」ホガース
精神病院では、見学料をとって、病人を見せて楽しませていたという事実もあるようです。
また、その絵を描く画家の心情。
「キリストの洗礼」ヴェロッキオ
ベテランのヴェロッキオは、売れっ子なので、絵を全部自分で描いていたら間に合いません。
細部は弟子たちや請負の画家たちに任せます。
ところが、レオナルドという若い画家に描かせた部分は、明らかに自分より上手い。
ベテランであるからこそ、その才能に気付いてしまったのです。
凡能な者なら、ベテランと一緒に仕事をしていても自分との仕事の質の差に気付かないかもしれないけれど、彼はベテランであるがゆえに、その若者の天才に慄き、自分の筆を折ってしまったというエピソードもあるそうです。
描いた絵が、画家自身の人生を変えてしまったという怖さ。
そして、その若者こそ、かのレオナルド・ダ・ヴィンチ。
「ガブリエル・デストレとその妹」
フォンテーヌブロー派の逸名画家
浴場にいる裸体の2人が描かれているけれど、実は描かれた時、モデルの女性はすでに亡くなっていて、それを暗示すると思われるものが絵に散りばめられている・・・
「ベツレヘムの嬰児虐殺」ブリューゲル
一見、生き生きとした配色の平和な村を描いているかのように見える絵が、実はあまりに残虐すぎて、誰かがところどころを書き替えたらしい・・・
著者は、「この絵の真実はこれ」と鑑賞の仕方を押し付けているのではありません。
歴史背景や文化・常識・法律、そして画家を含めた絵に登場する人物たちの人間性を知った上で鑑賞すると、こんな見方ができるという絵画のミステリーを教えてくれるのです。
とても怖くて、とてもおもしろい本です。
知人のもんさんのレビューで興味を持ちました。
もんさん、ありがとう。
で、なぜPart1でなく、Part2を読んでいるのかというと、
Part1は、まだ図書館での貸出し順番待ちだからです・・・(涙)