ハゲタカ(上・下巻)

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みなさん、暑いですか〜?
私は、たしかに暑いけど、なぜかきついとは感じていません。
なんで、こんなに夏が好きになったんだろう。
暑さを感じる神経がヤラレちゃったのかな。



さて、「ハゲタカ」。
お金儲けに興味のないアナタもワタシもだいじょーぶ。
新聞やニュース、ひいては裁判所を騒がしている企業たちの事件のカラクリが見えるようで、妙な感心が得られるかも。


バブル崩壊となっても、いまだ「こんなはずじゃなかったのに」という空気を払拭できずにいる日本企業たち。
そんな中、虫の息の企業の死臭をかぎつける。
救世主のような顔をして現れるのだけれど、目をつけられたら最後。
債権や株を買ってくれたと喜んでいるのもつかの間、あっという間に買収され、TOPたちは経営から追い出される。
そして、死んでいくはずだった企業を蘇らせたかと思ったら、売りさばいて大儲け。
もう、次のターゲットに目標を定めている。
それが、ハゲタカと呼ばれる外資バイアウトファンド。



でもね。



じゃあ、どうしてこの企業が狙われたの?という点をみると、乱脈経営、資産運用の公私混同甚だしい・・・といった顧客だけでなく、従業員も株主も裏切っているような企業だったりする。(この本の場合)
日本企業VS外資という話ではないんだね。
企業同士の買収劇や企業再生ドラマには、とんと疎い私だけれど、全てが会社単位でなく、人間単位の行為の上になりたっているんだなあと感じたよ。



ストーリーは、日常的に私たちが報道で知るようなものが土台となっていて、登場する企業名も「三葉銀行」(三和銀行?)、「足助銀行」(足利銀行?)・・・となんか聞いたような名前が、失礼ながらもぷっ♪と笑ってしまうようなものになっていたりするのが多数。
もちろんフィクションなんだけど。
現実の報道では、会社という鎧を着たのっぺらぼうが「申し訳ありません」と頭を下げるところしか映さないけど、この本の中では、その裏でうごめく人たちの顔と言葉がリアリティをもって飛び出してくる。
新聞には絶対載らない料亭でのやりとりが、重要なシーンだったりもする。
買収や企業入札って、こんな風にやってるんだー。へえええ。
しかーし。
単なるお金をめぐる駆け引き・陰謀・だましあいの話だと思ってはいけません。
企業戦士たちが男のロマンとか言ってる乾いたドラマでもありません。
倫理や正義感、粉飾しないお金の見方が、ハゲタカや対する企業再生家たちの底辺にあるのがすごく意外でおもしろかった。
それは、バイアウトファンドで、ゴールデンイーグルの異名をもつ鷲津氏も同じ。
彼がジャズピアニストをやめて、この世界にはいった本当の目的が、最後の最後に明らかにされて、読者が感じてる「おもしろさ」の元となっていた事実を知ることになるんだよ。



TVドラマには登場しない?リン・ハットフォードは、外資TOPの超クールでシビアな女性。
言葉も悪くて、キョーレツなキャラだけど、鷲津氏を心から愛していて、その愛し方がまた粉飾決算なし。



TVドラマ「ハゲタカ」は、続編である「バイアウト」の内容も含めていて、更に編集されているので、本の内容とはちょっと違うみたいだなあ。
ドラマの方は、鷲津と芝野の戦いのようにも見えちゃうけど、本は全然違う。
ピックアップされてるエピソードも、登場する企業も、登場人物もやや違う。
ドラマ製作には、現実世界で繰り返し引き起こされる儲け主義による不祥事件(タイミング的には、ライヴドア村上ファンド?)をきっかけに社会への問題提起的な意味合いもあったのかな。
「バイアウト」はまだ読んでないし、ドラマは、なんと、この本をちょうど読み終えた時にTVで「本日から6夜連続アンコール放送」と知って見始めたばかり。(まだ3夜目)
だから、まだよくわかんない。



それにしても、この外資ファンドの情報収集力、買収方法、企業の再生力への姿勢がはっきりしているのは、今やっと日本に広がり始めた「コンプライアンス」の考え方が徹底してるからかなと思った。
私は、冬に受けるコンプライアンス関連試験の勉強を始めたところなのだけど、「法令遵守」と「コンプライアンス」の徹底的な違いを知って、目からウロコが落ちているところなんです。ポロリ、ポロリ、ポロリ・・・←ウロコ
コンプライアンスとは、単純に形式的に法律に背かないことではなくて、社会的にも倫理的にも優良で、また常にそういった成長を続ける状況なのだそうで。
そして、それがきちんと企業自体の利益につながるんですねー。
「ハゲタカ」は、この勉強の参考書になるよ。
「会社がつぶれる」となると、悲劇的な場面ばかりが思い浮かぶけど、どんな会社がどう処理・再生されていくのかは、日本の社会にとって大事なことなんだと思える本だったなあ。