山本文緒 7冊
- 作者: 山本文緒
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2005/06/25
- メディア: 文庫
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「あの人、なんにも考えてないんじゃないの?」
とか
「一体、何考えてるんだか」
とか
「よくそれで平気だね!」
と時にいらだったり?
そんな風に感じてしまう誰かっている?
もしくは、自分がそう思われてるかも!?
何も感じない、心がのっぺらぼうな人なんているわけないけど、あまりにも自分と違っていると、理解できないというより、理解を放棄したくなるのかもしれません。
または、自分を理解してもらうことを諦めてしまうことがあるのかもしれません。
そんな小さな絶望の堆積。
この本では、のっぺらぼうに見える人たちの心の動きや安心していたつながりの中の空洞を可視化しています。
そうだなー。
犬が人間の言葉を話せたらなーと思ったとして。
その犬がほんとにしゃべってしまったかのような。
シュールで、ちょっと残酷な、短編集。
なんだかね、この本に登場する絶望を私はなんとなく理解できるよ。
私に似た女性は登場しなかったけれども(と思っている)、なにか以前あった気持ちをなぞられるような不気味さまである。
せつないコーフンです。
一見、ふつーに日常をこなしているように見える人ほど、ドキドキしてしまうんじゃないかなあ。
心の中の膿に気づいたり、それが出ていく感じはおもしろいけど、膿を出したら、すっきりシアワセかというとなんだか違う。
空っぽな自分に気づいてしまう経過は、スリリングといってもよいかもね。
収録されている短編全ての主人公が31歳の女性である「ファースト・プライオリティ」には、ちょっと変わってるけど、でも確かに身近にいる誰かの気持ちを体験できます。
この「ファースト・・」をきっかけに、山本文緒を連続して読むようになったよ。
続いた「プラナリア」「紙婚式」3冊がよかった。
とてもよかったから、本の空気が移ってきて、なんだか憂鬱になっちゃった。
「群青の夜の羽毛布」「落花流水」は、物語が転調されているような、時に主人公は一体誰なんだろうと惑わされるような感覚に陥れられます。
ただ、こんなに身近な男女が、血縁関係や法的な関係を無視してつながっていくと、せっかくの絶妙な心象風景を安っぽくしてしまうような気もするなあ。