考証要集 秘伝!NHK時代考証資料

これは、ほんとに秘伝だわ。
NHKの時代劇やドラマの時代考証を担当していた現ディレクターが著者。
時代劇を製作する際に、その時代にありえない物、言葉、文化などをチェックして、デタラメを減らすのが時代考証
実は、風俗や建築などそれぞれの専門家のチェックは入るのだけど、専門家の守備範囲外や専門と専門の隙間を埋めていくのが、重大なミッションなのだそうだ。
視聴者には歴史マニアも多いから、指摘もするどくて大変だとか。


一方で、すごくおもしろいことを言ってる。


その時代を完璧に再現することを目指しているのではない、と。



時代劇は、あくまでも時代を背景にした作り話だから、完璧に再現したら、全く面白みのないものになるのだそうだ。
史実をチェックするけど、どのように不完全さを配置するかが、ドラマのおもしろさに繋がるんだね。
「架空の世界をよりそれらしく見せる」ことで視聴者の期待に応えるのだと著者は言ってるよ。



薄い文庫本だけど、知識と研究と経験が詰まってる資料だね。
この本の同じ内容を調べろと言われたら、一体どれだけの時間がかかるだろう。
私は本を読む時、気になった箇所に紙をはさんでおいて、読了後にその箇所を読みなおすのだけど、「へええ!」が多すぎて、こんな状態になってしまった。

現代で普通に使われている「活躍」「可能性」「記憶力」「常識」などといった言葉が時代劇では使えない。
現代で間違った使い方をされている言葉も解説。
源氏名」についても驚いた。
これらの解説に沿って、実際に撮られたドラマでの出来事も紹介されている。


項目は五十音順に並んでるから、風俗、科学、医学、植物、軍事、食材・・・と色んなものが飛び出してくる。
日本で「キス」は、いつ始まったのか・・・の次は「傷薬」で、なかなかグロテスクな話が。
「きつねうどん」は江戸時代には、まだない。
「御意!」の正しい使い方。
「射殺」と「銃殺」の違い。
「消毒」は1860年代以降に欧州で始まったので、西洋医学の江戸の医者にさせたらマチガイ。
足袋が普及するまでは「素足」が礼儀正しい。
まだ日本に存在していない外来種の植物が、その時代に映っていてはいけない。
雛人形の並び方の謎も解けた。
女性の喪服は、白だったとか。
「勇気をもらった」「雪の結晶」など、項目は1つの単語にとどまらない。


1680年に「ぎょっとする」の言葉が存在していたことにぎょっとする。

江戸時代に「大都会」という言葉が使われていたなんて、あ〜〜あ〜〜〜果てしない〜〜〜

さらに、江戸時代に「え、マジか!?」という言葉があったなんて、マジか!?

そして、「わーい!」の謎。