孤独な死体 法医学で読み解く日本の今

(022)孤独な死体 (ポプラ新書)

(022)孤独な死体 (ポプラ新書)

著者は、解剖は5,000体、検死は20,000体を経験している法医学者。
警察の調べで自殺や突然の病死と判断された遺体を、更に調べると他殺であることが判明したり、また死に至らざるを得なかった間接的な悲しい状況が見えてきたりするとのこと。
遺体の声なき声、埋もれた真実を医学から解くことで、実はその死の背景に重い状況や社会状況が浮かび上がってくることを訴えている。
遺体がこんなに多くを語るなんて、推理番組が溢れる現代にいても、驚いてしまう。


例えば、統計では、高齢者の自殺の原因トップは「病苦」だけど、本当にそうなのか?
実際には、家族に疎まれて精神的に追い詰められた自殺なのに、警察に問われた家族はそうは言わない。
「神経痛に苦しんでいたようだ」と答え、統計には「病苦」とカウントされてしまう。
子どもの自殺や家の中での死についても、「事実」の後ろにある「真実」は見えにくい。



多くの人が周囲に迷惑をかけない「ポックリ逝く」を希望するけど、これは結構面倒らしい。
「ポックリ=不審死」だから。
目撃者もいないし。
分からないと「心不全」にされちゃう。
家族が殺人容疑をかけられるリスクもあるけど、実際に家族が殺めているケースも少なくないとか。


腐敗臭の不思議についても説明。


単に医学として死の原因を探るのではなく、その背景や社会を透かし見て、遺体の声に耳を傾けてる。