映画のグルメ〜映画と食のステキな関係〜

映画のグルメ―映画と食のステキな関係

映画のグルメ―映画と食のステキな関係

こういう本って、例えば池波正太郎さんのように映画や文筆が本職で、食は趣味という方が書くことが多いと思う。
でも、この本は、食が本職で、映画が趣味という人が書いているためか、アプローチの仕方があんまりロマンティックじゃない。


「おいしい♪」「ステキ♪」


を通り越して、蘊蓄や分析や歴史に文化にマーケティング・・・そんな話が詰まっている。
著者は、大学で食品化学を専攻し、食品メーカーに入社。
商品開発部門で100都市を訪れて、食材・料理・食品・文化の調査研究に携わったという食のプロ。
胃腸薬片手に、「食べることが仕事」というキャリアをこなしてきたそうだ。
ルパン三世カリオストロの城」の項では、ラーメンについて語るのだけど、なぜ海外に行くと無性にカップラーメンが食べたくなるのか・・・について触れていたりと、化学としての食の知識が豊富。

一方、映画は趣味とはいえ、淀川長治さん主催の映画教室に参加していたりと、こちらも半端ではないらしい。



そんな著者の解説のおかげで、興ざめするどころか、映画のリアリティがぐんと増す感覚が、とてもおもしろい。
太陽がいっぱい」では、イタリアのレストランのドレッシングについても語られている。
テーブルにワインビネガーとオリーブオイルと塩コショウが置いてあり、自分でドレッシングを作るのが一般的、とかね。
しかも、そのビネガーも地方によって置いてある種類が違う、とかね。


違う国、違う時代の背景で、映画の中では当たり前のことが、観ている者には理解できないどころか、気付くこともなくエンドロールを迎え、「ああ、おもしろかった」と言っていることは多いはず。

「刑事ジョン・ブック/目撃者」のラストで、「イギリス人(イングリッシュ)に気をつけろよ」というセリフが出てくるらしいのだけど、この「イングリッシュ」の意味やこのセリフがどんな感情から出たか・・・公開された時の字幕がどうなっていたのか知らないけれど、私だったら完全に流してしまってると思うなあ。
かなり重要なワンフレーズなのに。

リンゴを食べるシーンは、アダムとイヴの禁断の行為を暗に示していたりね。
何気なく置いてあるものや設定に隠されたメッセージの解説を読むと、映画が謎解きの宝探しのように思えてくるよ。
映画に対する著者の熱い思い入れも盛られているので、ついこちらも、観たことのある映画ももう一度観たい衝動に駆られ、TSUTAYAに走ろうとしているところ。

取り上げられている映画は、節操がないと言ってもよいほど、色々。トトロまで出てくる63作品。
ローマの休日」から、ジェラートを取り上げてる。
七人の侍」からは、米とご飯。
蒲田行進曲」からは、おでん。
雨に唄えば」からは、ショートケーキ。
エデンの東」からは、レタス。
「ゴッド・ファーザー」からは、オリーブオイル。
2001年宇宙の旅」からは、宇宙食
「忍びの者」からは、鮎。
「張り込み」からは、氷。
十二人の怒れる男」からは、チューインガム。
「おとうと」からは、桃の缶詰やレトルト食品。

などなど。