アーティスト(ネタバレなし)

uiui2012-04-16

アカデミー賞作品賞など最多5部門・・・という広告が、ちょっとピンとこない気がするよ。
それは作品が悪いからではなくて、派手なシーンやスリル、高度なデジタル技術などと無縁の映画だから。
最近の映画の価値観とはかなり違うのではと、私が勝手に思い込んでいたのかも。
影技術が出尽くし、飽きられてしまったから、意表をついて「サイレント映画」でもやってみるか・・・そんな映画だと思って観たら、この映画に小さなパンチを受けてしまう箇所がある。
監督はそれを見越して、この映画を作ってる。
これは、音に溢れた今にしか作れないサイレント映画なんだね。


セリフに頼らない(字幕が出る場面もある)分、俳優さんの表情の仕事はすごい。
もちろん、やや大げさにはなるのだけど、コメディの百面相では決してなく。
そして、その表情を補うのが、撮影の技。
機器の高い技術を競うのではなく、表現者の発想とそれを伝える腕。
劇中劇という手法自体もそうだけど、個人的には、階段のある場面の撮り方が印象的だった。
セリフのない空間をうまく切り分けたり、上り下りする人がまるで「音」のように動くのが観客の目にはいってくるんだよ。
ちょうど今、「階段 空間のメタモルフォーゼ」という本を読んでいるから余計に階段を意識しちゃったのかも。




主演のキャスティングの第一ポイントは、クシャッとした輝度100%の笑顔だったのではないかなあ。
笑顔って、見飽きないなと改めて感じる。



難しい抽象画的な映画ではなく、ストーリーはいたって単純なラヴストーリーなので、自然に想像力を動員させられることになる。
想像にエンジンがかかれば、観客は笑ったり泣いたりと忙しくなる。
一方的に予想通りの感動を与えられてオシマイではないところが、余韻の長さの理由かな。


演技の良かった動物に与えられる「金の首輪賞」をもらったジャック・ラッセル・テリアのアギーくんの人気も納得。
ちなみにアギーくんは、ワンパクすぎて捨てられ、保健所で処分されそうになっていたところをトレーナーに見染められ(?)、引き取られたのだそうだ。
その後、物怖じしない性格といい、俳優としてのメキメキと頭角を現したのだとか。