周防正行のバレエ入門

周防正行のバレエ入門

周防正行のバレエ入門

映画「Shall we dance?」「それでもボクはやってない」等の監督である周防正行さんは、「Shall we〜」で主演したバレリーナ草刈民代さんと結婚した。
彼女と出会うまでバレエにはほとんど縁もなく、素人だった。
そんな周防監督は、生活=バレエである民代さんと結婚することが決まった時、民代さんのお母さんに「ほんとにいいんですか?」と確認されたそうだ。
あまりにもバレエ一色の生活をしていた彼女なので。


バレエ初心者である周防さんの目線で、バレエの魅力を語ったり、バレエ界への疑問を民代さんにぶつけるインタビュー形式の本。

裏表紙にこんな写真が


周防監督

ついているからって、お笑い本じゃないですよー。
でも、へへぇっ!と驚き笑いはたっぷりさせてもらえるかな。





監督がとても驚き、実際に民代さんがバレエで生きていくことをなんとなく意識し始めた少女時代にも驚いたこと。
それは、



バレエ公演に出るだけでは食べていけない




バレリーナは公演に出ながら、教室等で教えたりしないと収入にならないのだそうだ。
これが、海外と日本のバレエとの大きな差。
劇場の在り方や本番までの段取りも世界各地でかなり差があるという実態を民代さんが体験を通して説明してくれたりと、話題は民代さんのバレエだけでなく多岐にわたる。
格式高く、別世界のようにも見えるバレエ界が、下界に降りた来た感じ?



監督はバレエ公演にもついていったりしているようで、直前の様子や裏側にも舞台からだけでは見えない姿を描いた「バックステージ日記」やバレエ用語の説明などもついている。
観客席では知り得ないエピソード満載で、バレエを観たことがない人も観てみようかなと思ってしまいそう。
民代さんがバレリーナを引退することについても、ご本人の淡々とした、でも深い想いを聞く。



本の後半に、チャーリー・チャップリンの映画たちへのオマージュとして作ったバレエ演目「CHARLOT DANSE AVEC NOUS(チャップリンと踊ろう)」を映像化した映画「ダンシング・チャップリン」の製作裏話が出てくる。
監督はもちろん周防さんで、主演のルイジ・ボニーノさんと一緒に民代さんも共演する。
バレエ作品を作ったのが、ローラン・プティ氏で、この映画も周防さんに任されたとはいえ、彼がOKを出さないとストップだ。
この本は、この映画の公開に合わせて出版されたようなもので、ネタバレすることなく、映画の制作を垣間見るような気持ちで読ませてくれる。
映画では、1幕として「制作ドキュメンタリー」を入れているのだけど、この本は更にこの1幕の序章のよう。映画が一層楽しめるよ。



ダンシング・チャップリン」は、チャップリン作品の「黄金狂時代」「犬の生活」「モダン・タイムズ」など13演目を1つの舞台に仕上げているのだけど、単なるオムニバスとも違う。
チャップリンへのリスペクトは果てしない。
舞台ものを映画にするといっても、舞台の中継録画にはしたくない。
でも、映画ならではの良さをもちながら、編集できるから「なんでもアリ」みたいなことにもしたくない。
そんな「禁欲的な映画」になっているとのこと。
また巨匠プティ氏が、できた映画を見て気に入らなかったら、すべてがパァである。
制作は、本当に大変だったようだ。




ダンシング・チャップリン」を今日観た感想としては、この本を読んでから観に行ってよかった!
バレエ初心者も楽しめる映画!