球体の蛇

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丸い蛇だなんて、妙なタイトルです。
これが示すものは、最後まで読まないと分かりません。
冒頭に、「星の王子様」の一節が出てきます。
「ゾウをこなしているウワバミの絵」のくだりです。



本では、ありそうな設定とありえない展開が共存しているのだけど、現実の世界で真実と虚実が見わけがつかないのと同じように、うまく背中合わせになっている。
あまりにも冷たくて怖くて醜い真実を
思いやりや愛情や、時には残酷な同情によるウソで捻じ曲げてしまうことがある。
そんな所作をそれぞれが密かに行うことで、
もう事実の原型は誰にも分からなくなっていて、
最後には立ちすくむことしかできなくなる。
絶望的な虚実は、偽物のくせに、人の命まで奪ってしまうことがある。
やさしさでできたヴェールで、醜い真実を隠してあげたつもりが、そのヴェールで大事な人が窒息しそうになっていることに、時間が経って気づくこともあるようだ。



10代独特の(?)異性への関心や執着を発端に、17歳の男の子が事件や経験を通して、哀しみの層を重ねていく様が描かれてる。
そんなサスペンス。