地味クリと絹代さん

我が家のイベント担当者(3号)が猛勉強中なので、うちは特に準備なしの地味なクリスマス。
とりあえずこんな石鹸だけ買ったみた。

チキンも焼いてみる。


忘年会での「子どもの頃、自分にサンタクロースは来たか?」という問いで、「うちは、サンタさんは縁側にプレゼントを置いていってくれることになっていた」という方がいた。
和洋折衷感がいいねえ。



かくいううちもハイカラな時間を和洋折衷で過ごしたよ。
田中絹代さん出演のモノクロ映画「山椒大夫」を観ながらという渋さ。←異様さ?

山椒大夫 [DVD]

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娘3号「おもしろい、おもしろい♪」と言いながらも、登場人物の名前を言い間違える。
厨子王」の名前を「ずいお」と。
なんですか、ずいお、て?



国を司る平正氏の妻役を絹代さんが演じる。
最初は雛祭りのお雛様みたいな風情なのに、最後のボロボロのおばあさんの演技は迫力あり。
安寿が入水するシーンは湖なのだけど、やはり絹代さんが出演する「雨月物語」でも湖の幻想的なシーンが出てくる。
カメラは宮川一夫さんだそうで、狭い空間のシーンでもとても立体的で、情感の動きが伝わってくるカメラワーク(というの?)だなあと思う。

雨月物語 [DVD]

雨月物語 [DVD]

雨月物語」は、怪奇な9編の短編でできていて、そのうちの「浅茅が宿」と「蛇性の婬」を編集してできたのがこの映画らしい。
作品名の意味は、冒頭に「雨がやんで月がおぼろに見える夜に編成したため」とある。
1953年ヴェネチア国際映画祭 サン・マルコ銀獅子賞、イタリア批評家賞を受賞。
京マチコさんと田中絹代さんがそれぞれ化けて出るわけだけど、全く異なったタイプながら、想いの深さゆえの哀しい怖さが伝わってくるよ〜。
ひー。



2本が時代背景的に「動く百人一首」的な映像だったのだけど、1900年代に飛んで、絹代さん主演の「噂の女」。

噂の女 [VHS]

噂の女 [VHS]

京都島原の廓で置屋お茶屋を兼ねた井筒屋の女将初子(絹代さん)は、女手一つで切廻して商売している。
東京にいた一人娘雪子(久賀美子さん)が、婚約破棄のショックで自殺をはかったので家に戻したら、なんと自分の愛人である医者の的場が、雪子と恋愛感情を持つようになってしまうというストーリー。
母娘で同じ男性を愛してしまうというドロドロ系になりがちなものだけど、ここで絹代さんの演技が光る。
女将の誇りを持ちながらも、女性としてのかわいらしさに汚れがない。
嫉妬したり、もう若くないことを思い知ったりしつつ、母として娘を思う気持ちに濁りがない。
オードリー・ヘップバーンを意識したようなはつらつとした洋物の美しさの久賀さんに対し、和服の古い女ながら「片意地」ではない可憐な強さを表現。



3つの作品を通して、決して派手ないでたちでない絹代さんなのに、凛とした強さと眼力で、作品のメッセージがぶれないように守っているかのように感じた。
下関の史料館でも、「目が見えなくなって、セリフが言えなくなって、座っていることしかできなくなっても女優を続けられるかしら。きっと大丈夫ね」と自問自答している様子があったけれど、そんな気持ちが芯になってる演技だなと思う。





さーて、今年最後の仕事は、固定資産税を払うこと。
来年最初の仕事は、市民税を払うこと。
ぶー。
なんて言っていると、作家O・ヘンリーのネタにされそう。


小市民労働者階級のため息をつきつつ、クリスマスでもあるので、O・ヘンリーの短編集を久しぶりに読む。

オー・ヘンリー傑作選 (岩波文庫 赤 330-1)

オー・ヘンリー傑作選 (岩波文庫 赤 330-1)

独特のユーモアとペーソスの組み合わせはくせになる。
推理小説みたいにちゃんと練られた出だしと結末の意外性がワクワクさせる。
「ねえねえ、こんな話があるんだよ」と誰かに伝えたくなるストーリーなんだよね。読んだ後、ホカロンみたいにずっとポカポカと記憶が温められてる気がする話だからかな。(哀しい話や皮肉なものもあるのだけれど)
O・ヘンリー自身が、勤めていた銀行のお金を自分の副業(出版)に流用してクビになったり、世の中の辛酸をなめて、作品が人気を博したのも本人没後ということなので、苦しみから生まれた笑いとスパイスというところか。

「賢者の贈り物」
貧しい夫婦の妻がなんとか節約して、夫へのクリスマスプレゼントを買おうとするけど、1ドル数セントしか貯まらない。
妻は、自慢の長くて美しい髪を売ってお金を作り、夫への贈り物を買う。
夫が帰宅すると、妻の髪を見て唖然とする。
それは、髪型のせいではなかったんだよ。


「二十年後」
20年経ったら、同じ日時に同じ場所で会おうと約束した友人同士。
1人はちゃんとやってきた。
もう1人はなかなか来ない。やっと来たけれど、この人は違う人では?
男の友情系。短編たる短編と思った。
この話の続編となる「改心」もウルッとくる。


などなど。