富次朗商店と温泉のひょっこりひょうたん島

uiui2010-09-07

本日の移動手段は、レンタサイクル。
大抵の観光客は、レンタカーにするみたいだけど、景色を自分のペースで楽しんだり、土地を味わうには自転車の方が良いと思ったので。
ただし、この島は坂だらけだし、この日の行程は山を登っていくようなルートもあり。
町役場で貸してもらえる電動アシスト自転車「島ちゃり」で行く。
自転車それぞれに名前がついている。
私に貸してくださったのは、「かえーしー号」。島の方言で、「かわいい」という意味だそうだ。

これは、充電用の風力発電


島には要所要所に観光地図も置かれ、道路にはポイントナンバーがふられているので、自分が今どこにいるのか分かりやすくなっている。
だけど、各観光地の看板は見落としそうになるものもあり、オリエンテーリングでもしているようなスリルがある。
トップ画像の名護の展望台も、レンタカーにしていたら、通り過ぎてしまったと思われる。



電動アシストとはいえ、すごい坂が小さい坂になるくらいのアシストなので、やはり自分でこがなくてはいけない。
汐間温泉に着いた頃には、汗だく。
温泉が見当たらないので、地元の人に声をかけた。
教えてくれたところに行くと、

ざっっぱぁぁぁあぁぁあん!!



そう。汐間温泉は、干潮の時だけ海岸に現れる温泉なのだ。
干潮ならば、この辺に、



干潮時間を間違えたらしい・・・

ざっっぱぁぁぁあぁぁあん!!



場所を教えてくれたおまわりさんと地元のおじさんは、「まぁ、コーヒーでも飲んで休んでいきな」と言ってくれた。



気を取り直して、 「みはらしの湯」へ。
2つある露天風呂は、奇数日と偶数日で男風呂と女風呂が入れ替わる。
偶数日の方が眺めがよい方。もちろん、今日は偶数日。

体がリセットされるなあ・・・・ほぉぉぉぉ。
休憩室もあり。
ここのスタッフも、私が電動チャリだと気づくと、「充電器あるよ。しておきましょうか?」と声をかけてくれる。




充電はしなくても大丈夫だろうと思って出発したら、どうも電気メーターが思ったよりも減っている。
充電器のある食品雑貨店「富次朗商店」に行く。
スーパー店舗とは別のオープンスペース的建屋に充電器はあった。
そのスペースは、誰でも自由に休憩することができるんだけど、壁一面に本。
歴史ものから、小説から、ヘッセまであるぞ。
そして、アコギとアコーディオンまで。
富次朗さん、すばらしいよ。


途中、街路樹ではない、シュロの林をいくつも見かける。

岩崎さん(前日のガイドさん)によると、全国の花屋さんのシュロ(花輪や花束の後ろで広がってる葉)の9割以上がこの八丈島産だそうだ。
八丈では「子どもができたら、シュロを植えろ」(お金がはいるから)と言われているらしい。



暑くて忘れそうになっていたけど、お昼ご飯の時間。
予約を入れておいた島料理の店「いそざきえん」へ。
ここもどのガイドブックにも載っているけど、素朴な佇まい。

メニューは、コースになっている。
「ご赦免料理」は流刑で来ている人が赦されて帰る時のお祝い料理。
塩でできた器で蒸した魚(1匹まるごと)などもついている。
一人では食べきれないので、私は「黒磯料理」。
この店の畑から採ってきた野菜や海の幸が盛られた昔からの島人のごはんだ。

素材や内容は、季節によって多少変わるけど、今日は、
・あしたばこんにゃく
・刺身(めだい、かんぱち)
ムロアジの煮物
・岩のり&トサカのりの酢の物
・さつまいもの金時みたいなもの
・かぼちゃの煮物
・揚げナス
四角豆胡麻和え?
・麦ぞうすい
・自家製たくわん
・スイカ

まだあったかな?

四角豆って、初めて見た。切り口が四角。

雑炊は、サトイモ・シイタケ・あしたば・岩のりが入ったドロリとしたもので、どちらかというとおかゆみたい。
これだけでも元気になれそう。
「島のこうこう」と呼ばれる自家製たくわんと一緒に。



忘れてはならない黄八丈の工房を訪れる。
「め由工房」。
庭先になにやら干してあるのが見える。

工房の様子。

島の繭100%で作られた薄墨色の着物は、900万円だった・・・・


来た道を戻るわけだけど、あらためて自転車をこいできた道を見下ろすと、かなりの距離&坂道だったことに気づき、もう二度と同じことできないかもと思ってしまう。
あとで調べたら、全行程で約50kmだった。山あり谷あり。

人生もそんなものだよなぁ。
途中で振り返ると怖くて不安で前に進めなくなる。まずは、前へ進め、だね。



山を下りて、今度は八重根方面へ。
南原千畳海岸は、溶岩が折り重なって拡がっているため、千畳にも見えるというネーミングだ。


車がやっと1台通れるようなボコボコ道で曲がると、やっと見つけた
「空間舎」
おしゃれなカフェで、ラズベリーやマンゴーのコンポートのようなトッピングが豪快に乗っているかき氷は、氷がとても細かくてフワフワの雪みたいなんだよ。
私は、「あしたば小豆ミルク」に。中島美嘉似のスタッフさんが運んできてくれた。

あしたばのほろ苦さが、3時間近くサイクリングしてきた体に心地よい。



このカフェは、手作り工房も併設してあって、「植物のツルでカゴを作る」「流木の簡単な家具作り」などのプログラムに挑戦できる。
私は、 「流木の灯り作り」を体験。
木に棲みついた海の虫などをしっかり処理した流木がはいった箱から、好きなものを好きなだけ選び、デザインを考える。
するとインストラクターの方、以降パパ氏と呼ぶ(要注意人物その2)が、電動工具などを使ってそれを忠実に形にしてくれる。
もちろんお客も難しくないところの作業をする。
パパ氏は、会社を定年よりも早めに退職し、まずは小笠原に移ったそうだ。
小笠原の魅力に満足な日々を送っていたのに、このやんちゃ坊主のような八丈島に来てしまった。
完璧な小笠原よりも、自然との闘いや失望との戦いがある八丈島に残ったそうだ。
「人間は、完璧なものには飽きてしまう。未完全なものにこそやりがいを感じるんじゃないかな」と。
淡々と語る姿に、人生のリセットって、意外とできるものなのかもしれないと感じる。



この方は、前述のProject WAVEの岩崎さんとも懇意だそうで、彼女の話題で盛り上がる。
彼女の華奢な体からは想像もつかない経歴と、八丈の外来種としての生き方に、前日の「タダモノではない」(クダモノでもない)疑惑は見事納得しえたのだった。
他のお客さんがたくさんいたら、パパ氏と色々お話できなかったかもしれない。
幸運を感じる。



で、完成品。

流木の手で灯りを包み込むようなイメージで。
ありがとうございました!!!



時間が押しているのに、どうも海の景色から離れられない。


最近、良いカメラが欲しいなあと思ってみたりもするのだけれど、写真は他の人の眼と心というフィルターを通ってできた芸術であって、私自身の網膜と脳裏に焼きついたものとはやはり別ものだ。
どんなにすばらしいカメラで、凄腕のカメラマンが撮った写真でも、あくまでもすばらしい芸術であって、自分自身の心のものとは完全一致はしないんだろな。
というわけで、今日も携帯電話のカメラです・・・




 あぁ、陽が傾いてきた・・・





あわてて、焼酎酒蔵「八丈興発」へ向かったけど、ちょっと道に迷い、見学予約時間を過ぎてしまった。
電話してみると、「今、税務署が来ていて。少し待っていただけたら、だいじょうぶですよ」と言ってくださったのだけど、もう空港に行かなくちゃ。
税務署めー。
でも、先ほどのパパ氏の言葉を思い出す。
「不完全な方が、次を創れる」
また、来ればいいね。
せっかく道を教えてくださった郵便屋さん、工事のおじさん、ごめんなさいね。



タクシーで空港の入り口まで来ると、最後のラッキーが待っていてくれた。




虹!!!






しかも、同じ目線。
太い虹が2本。(右に薄いのがもう1つあるんです)




この虹の出現で、今度八丈に来ても、同じ八丈島はいないんだなということをかえって実感した。
「次に来た時は・・・」と、もう考えてしまう。





さて、ひょうたん島日記2日分に出てこなかった言葉は次のうちどれでしょう?
1.クダモノ
2.ケダモノ
3.ムダモノ
4・タダモノ







答え:3.ムダモノ



賞品はありません。