焼酎と流刑のひょっこりひょうたん島

uiui2010-09-04

のんびりとした島でね。
どのくらいのんびりしているかというと、道路の警報用伝言掲示板に、




「方言講座」のお知らせが表示されてるくらい。


でも、ここは東京都。
東京電力もあるし、車だって「品川ナンバー」。



でも、ピーコックは大丸ピーコックじゃなくて、

八丈ピーコックだ。



都心から、約300kmほど南にある東京。
羽田から飛行機でたったの45分だけれど、陸からだんだん離れてできた島と違い、火山の噴火で現れたこの島。
独自の生態系と歴史が今も流れてるのが八丈島だ。
歩道は、溶岩を切って敷き詰め、街路樹はシュロとハイビスカス。溶岩は、こんなにちゃんと加工できるものなのかー。

生け垣に溶岩。


八丈富士(高さ854m)と三原山(高さ700m)がドカンドカンと連なっていて、ひょうたん型なので、「ひょっこりひょうたん島」のモデルになったことでも知られる。


実は、ガイドブックを読んだり、他の人のブログを読んでも、いまひとつ旅のイメージがつかみにくかった。
大抵の観光地なら、ある程度調べれば、どことどこに行って、何を食べて、どんなお土産を買うかをシミュレーションできるのに。
でもね、行ってみて、納得。
八丈島は、商品化され、マーケティングのマニュアルに沿った観光地ではないんだね。
観光客慣れしたお土産屋が並ぶ商店街は、ない。
というか、お土産屋自体が数えるほどしかない。
観光地だけど、観光地じゃない。
山・海・温泉・滝・川・海の幸山の幸・・・こんなにも観光資源に恵まれているのに、ピカピカの観光施設もないし、息がつまるような過剰なサービスも皆無。
観光客は、観光客「様」ではなく、地元の生活にちょっとだけ紛れ込ませてもらうような感覚だ。
そして、ガイドブックでは決して分からないこの島の観光資源。
それは、地元の人たち。
あったかい。
ベタベタの愛想笑いがない代わりに、ほんとに自然な親切心にいたるところで触れる。
そして、外来種である人たち。
地元民ではないけど、この島に惚れ込み移住してきて、この島をこの島らしく「のんびり」生きさせるためにエネルギーを注ぎ込んで支えている人たちがいるのだ。
自然の神秘と同じくらい、こういった「人」という資源に出会えたことが、この旅の最大の収穫。
特に、以下で「要注意人物」と記すお二人。




今回の八丈島の旅では、八丈島の神様にとても親切にしてもらったと思う。
いくつもの幸運を授かった。
まずは、到着した空港からすぐに参加したスノーケリングでの幸運。
台風7号の影響で催行が危ぶまれたりもしたけど、GOサインが出た。
Project Waveさん主催で、インストラクターとして来てくださったのが
岩崎さん。←要注意人物その1
船で良いポイントまで移動し、海に入るのだけど、移動中にも数回ウミガメを発見。海に入っても、数回。
一度でもウミガメと泳げたら(もちろん、追いかけたりせず、眺めるだけ)、ラッキーだなあと思っていたら、こんなにも出会えた。
岩崎さんも驚くほどに、今回は多かったそうだ。
船の船長さん、カメをたくさん発見してくれて、ありがとう。
私の目では、きっと気づかなかったなあ。



水中メガネは、なんと近視用の度入りがあった。
その代わり、船に乗っている間も見えないので、



カメ、発見!!




の声に船上でも水中メガネをささっと目にあてるということを繰り返すことになる。



カメ!!
ささっ。
カメ!!
ささっ。
カメ!!
ささっ。

そのうち、船上でもずっと水中メガネ。





海の色は、絵具を溶かしたと疑いそうになるほどの鮮やかな青。
怖いくらいの透明度。






宿「KENCHA RUMAH(ケンチャルマ)」は、ホテルや民宿・ペンションとは違い、どこか学生寮のような作りと雰囲気。

自由に使えるキッチンのついた大きめのリビングの周りに、個室があり、それぞれに清潔なユニットバスとミニキッチンがついてる。
リビングで、宿泊客たちがコミュニケーションをとったりもできる。部屋着姿の女の子たちがフラフラ歩いてる。
私が泊ったお部屋は、シングルがキッチンでつながっているタイプ。
二人で泊まっても、個室っぽい。

チェックインを済ませたら、もうスタッフはいなくなっていた。
夜もいないらしい・・・(笑)



昼食にでかけたら、イタチの子が側溝の穴に走り込んでいった。
あちこち飛び回るチョウチョは、岩肌から流れでる水を吸う。



お昼は、一休庵の あしたばたぬきうどん

かなり太めの超手打ち麺は、あしたばが練り込んである。
あしたばのてんぷらが添えられて、山のようなかつおぶし。
すばらしい。



元気が出たところで、観光へ。
歴史民俗史料館は、昔の市庁舎の建物を利用している。

「石器や化石の古代」や「流刑の地」などの9つのテーマに分かれていて、かなりの充実度。
これは、八丈島流刑第1号となった宇喜多秀家の直筆。


八丈島では、飢饉の時に備えて、穀物でお酒を作ってはいけないことになっていた。
そこで、鹿児島からの流人たちが、さつまいも(穀物ではなかった)で作る焼酎の作り方を教えてあげたら、感謝感激されたのだそうだ。
これは、島酒の碑


丸い石を積み重ねた玉石垣も、この地の風物。



ふるさと村には、南国ならではの古代の高床式倉庫や家がある。


八丈島には、定期観光バスはなくなってしまったけど、BUSPAという2日間有効のバス乗り放題&温泉入浴フリーという1000円のチケットが売られている。
これを握りしめて、バスに乗り、まずは裏見ヶ滝へ。
滝の表。


滝の裏。


すぐそばの露天風呂(無料)は、混浴なので水着を着なくちゃいけない。
で、やっぱり監視員などいない。
湯船から、滝やせせらぎが見える。

湯が溢れる。幸溢れる。



八丈植物園へと移動。
もともと緑モコモコの島なので、植物園とはいえ、どこからどこまでが植物園なのか分からないくらいなのだけど、光るキノコなど、八丈ならではの自然や生物を体系的に理解できるようになっている。
キョンもいるよ!オスには犬歯がある!!


「スーパーあさぬま」で翌朝の朝食を調達しておく。

旅先のスーパーって、大好きだ。
40cmほどの名前を知らない魚が、切られずにドカンと売られている。
「椿の実回収ボックス」がある。
椿油を作って、その収益を自治体で使うのだそうだ。




いよいよ、八丈料理をいただける居酒屋梁山泊へ。

どのガイドブックにも載っている有名店なのに、観光客を地元客のように受け入れてくれるあったかい店だった。
一人客には、量を半分にしてくれるメニューもあって、いろんな地元料理を味わえるようにとの配慮もある。
焼酎がびっしりと並ぶ棚。おやじさんも陽気でおちゃめ。スタッフは、海焼けした元気な女の子たち。
いただいたのは、ネリ(島オクラ)を味噌で。ブド(海藻のにこごりみたいなもの)。くさやチーズ(お店オリジナル)。


「島寿司」漬けで、わさびではなくカラシでいただく。
そして、揚げたてのトビウオのさつま揚げは最高だ。


「あしたばビール」は、青汁風味のくせになる苦みがある。


「あしたばアイス」


カウンターに並ぶ一人客・二人客とスタッフとで、なんとなく賑わう。
おいしいものは、人を仲良くさせるよね。




もう、このまま眠ってもよいくらいなのだろうけれど、この後、私的には重要イベントがあった。
また、Project Waveさんの岩崎さんに、 「夜の森ウォーク」に案内していただくのだ。
夜にこそ生命を謳歌する生物・植物がいることを人間は忘れがち。
闇夜を体験することで人間は、自然に謙虚になれるような気がする。
そんな想いを抱かせてくれる素敵なツアーなのだ。
岩崎さんは、ほとんど懐中電灯も使わず、真っ暗な草むらを歩いていく。目が慣れてくると歩けるものなんだね。
たくさんのホタル。こんな時期に観れたのも幸運。
夜だけ開き、しかも朝には枯れてしまう花たち。
光るキノコ。
呆れるほどの星たちと天の川に出会えたのも、お月さまや雲が邪魔しないでいてくれた幸運。
そんなものを探索しながら、八丈島のへええ!!を岩崎さんが次から次へと話してくれる。
ほんとは全部書いてしまいたいけど、是非皆さんに行っていただきたいので、内緒にしておくよ。
闇夜で静かに歩みつつ、ノーミソと心は大興奮なのだ。





この辺りから、この岩崎さんがどうもタダモノではない(ケダモノでもない)気がしてくる。
ただのガイド&インストラクターじゃないなあ?
私という客を前にしても、「仕事をこなす」というよりは、彼女自身が八丈島のメッセージになっているような気がする。
私のことも、まるでコウモリが超音波で物を認識するかのように、本能でどんな人間かを嗅ぎ分けているような雰囲気。(決して、ジロジロ見たり、探ったりするわけでなく)
「自然科学」を感じる方だ。
正確に見極めてもらう方がきっと楽しいので、私も素で通させてもらう。
そして、彼女の不思議は、翌日、偶然にも幸運にも証明されることになるのだ。
それにしても彼女のガイドは、観光ポイントを説明するにとどまらず、「見えていても、観えていないもの」を観させてくれる。
今日の最大の幸運の一つは、岩崎さんに出会えたこと。





そして、海岸で満天の星にごあいさつ。
ここでまた、幸運に。






流れ星、発見。





この夢のような一日のシメとして似つかわしいかどうかはともかく、早朝から24時までやっているブーランジェリーという食品店に寄る。
くさやパンを買うために。
このお店、ケーキもどっさり並んでいる。
大きな惣菜パンもびっしり並んでいる。
夜9時なのに、夜中には売り切れるそうだ。
ほんと?外を歩いてる人なんて、ほとんどいないよ?
キツネやイタチが人間に化けて、葉っぱのお金で買いに来ているのではないかしら?という疑惑浮上。
くさやパンは、恐る恐る、ノーマル(くさやがはいっている時点でノーマルとはいえないけど)なものと、島唐辛子がはいっているものを1つずつ買ってみる。

食べてみたら、なんと!
もっと買っておけばよかったという後悔。
ワインにも合いそう。


2日目の旅は、電動アシスト自転車で何十キロ?
そして、また、要注意人物に出会います。
お付き合いのほどを。