ヴィヨンの妻

ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~ [DVD]

ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~ [DVD]

最初から分かっちゃいたけど、




暗い。






傍でなんとなく映画をチラ見しているガールズは、合間に、「やっぱり大谷は、ヤなやつ?」と聞いてくる。




たしかにヤなやつかも。
女々しくて疑い深いし、不安定だし、自分が立っているだけで精いっぱい。





一方、妻であるサチは、怖いくらいにピュア。
大谷にしてみれば、多分本当に、怖いのだろう。
「自分がこんなにダメなのに、こんなにピュアな存在はありえない」というような不信感を持ちつつ、愛情というよりはむしろ「執着」を持っているように見える。
それは、少し宗教に似ているように思う。
堕落した自分を恥じ、神を恐れるが、神から逃れることはできない・・・みたいな。




太宰治自身を投影した作品だとすれば、そこに小さな希望も見える。
サチの生き方に寄り添うことで、自分の生に許しを感じられるのが小さいけれど、大谷(=太宰治)にとって最大の希望なんだろな。
単なる法的なつながりや軽蔑と憎しみがエネルギーになっているカップルが世の中にたくさんあるとすれば、大谷とサチは「夫婦」という形を超えた、本当の意味で生きるためのパートナーなのだろう。
そんな二人に対して、私が感じるのは、憧れと同時におののくような気持ち。
どうしてかな・・・



映画「告白」に続いて、松たか子さん主演映画を観たわけだけど、実は今まで彼女の女優としての魅力をよく知らなかった。
この2本で、「恐ろしいほどのピュア」を醸し出すのがとっても上手だと感じた。
しかも、このピュアは、天使のような「真っ白」じゃなくて、漆黒や朱色に変化するんだ。