[読んだ本だ]拝金

拝金

拝金

通称:ホリエモン氏の小説。
年収200万円のフリーターが、携帯ゲーム事業から売り上げ500億円の大手IT企業に成長させる。
この先の人生をどうしようと悩みつつもゲーセンに入り浸っていた青年が、家賃280万円のレジデンスに棲むようになり、そしてまた、そこから去るのだ。
そう。
この小説のストーリーは、ホリエモン氏がライブドアを創り、そして失っていくまでをなぞっている。
ドラマ性からいえば、「ハゲタカ」などの方が上だと思うけど、フィクションだからこそ書けるノンフィクション。
プロ野球チーム買い上げの場面では、「大鉄バイソンズ」なんていう球団が出てきたり、TV局買収の話では「ヤマトテレビ」なんていう会社が出てきたり、「ハードバンクの朴社長」が登場したり・・・
でも、もっとギラギラ・ギスギスした内容なのかと思ったら、全然違っていた。
著者自身もどこがフィクションで、どこがノンフィクションなのかを宝探しのような気持ちで楽しんでみてほしいと書いている。




絶賛の声が高いけれど、これを書いたのがホリエモン氏でなかったらどうかなと思う。
彼の実体験を登場人物に自分を乗せながら語るところに、読者はスリルを感じるのではないかしら。
決して、弁解でもなく、見栄でもなく、卑屈でもない。
マスコミが伝え、各業界を怒らせた彼の姿の正体をサラリと見せてしまっている感じ。
ホリエモン氏や側近が逮捕された時、側近があっさりと裏切ってホリエモン氏に罪をなすりつけ、自分たちだけ釈放された時の思いも。




ヒルズ族には、男性にも女性にもランクがあるのだそうだ。
男性の場合、
クラス1は、有名芸能事務所に所属するアイドルと若手俳優たち。
クラス2は、上場企業の創業者。
クラス3は、年商10億円前後の会社オーナー。
クラス4は、業界系で、年収1000〜2000万円クラスのTV局・大手商社・広告代理店の社員など。


そのクラスは、むしろ身分と呼べるようなもので、たとえばクラス4の男性は、クラス2の女性にアプローチすることはできない。
おもしろいね。
自分たちのステイタスを維持するためにとても有効なやり方だし、この世界での上を目指すには分かりやすい目標となるね。
あくまでも、「この世界での」目標だけど。




お金って、何?という会話の場面がある。
それについて、登場する「オッサン」が説明するんだけど、おもしろい。
あるアイドルとお付き合いしたいと思っても、脂っこいおやじ(私が言ってるんじゃないですからね。本にこう書いてあるの)が100万円出しても付き合ってもらえないかもしれない。
でも、イケメンの若手俳優なら、お金なんて出さなくてもお付き合いOKかも。
ところが、イケメン若手俳優の方がお断りすることもありうる。
そして、脂っこいおやじは、100万円でだめなら、200万円ではどうかと言ってくるかもしれないのだ。
要するに、お金の価値は、交換したい人の「欲望」でいくらでも変動するものなのだ。
そういう意味では、「愛はお金では買えない」とよく言われるけれど、「愛はタダで買える」とも言える。
お金は、欲望を満たす手段にすぎないから、単にお金に執着し、貯め込んだだけでは「お金持ち」とは言わない。
欲しいものがたくさんあるからこそ、お金をたくさん稼いだ人を「お金持ち」=「拝金者」と言うのだ、と。




この本を読んだきっかけは、私がTwitterを始めた時に、フォローした覚えもないのにホリエモン氏が私のフォローリストに入っていて(他にもそういった人が数人いるんだけど、どうして?)、そこで「拝金」の書評が次々と書かれていたこと。
Twitterでの堀江氏は自然体で、淡々としているけれど、高飛車でもないし、くだらない(すみません)質問に対してもキレることなく回答をしている。
「小説の酷評はこちらで読めます」とamazonのサイトを紹介したりもする。
表だけでなく、裏があっての表だということを理解している感じが気持ち良い。
Twitterに書かれていた感動のメッセージとは、私の感想はやや違うけれど、自分が存在してみないと分からない世界があることが実感できるね。