家紋のすべて

現代では家紋なんて、結婚式とお葬式くらいにしか登場しないような気もするけれど、あのモノクロの記号に日本の歴史が凝縮されてるって、知ってましたか?
日本に多い姓「鈴木」。
この姓は、和歌山県熊野大社信仰から生まれたそうだ。
神に稲の穂を捧げた男は、神から「穂積」という姓を授かった。
穂積とは、稲穂を積み上げたものを示すそうで、これを熊野地方では「すすき」とも言い、農耕の神が宿る神聖なものとされていたとのこと。
熊野神社の神官たちが、「すすき」から「鈴木」と名乗り、しかも積極的に布教を行って、信者となった者にも「鈴木」姓を与えた。





そんなわけで、鈴木さんはたくさんいらっしゃるのだ。
鈴木さんによく使われている家紋



ちなみに「佐藤」さんは、藤原秀郷の流れで、彼の子孫が代々、「衛門尉」(さえもんのじょう)という官職についていたから、できた姓。
伊藤さんも工藤さんも加藤さんも、藤原氏の流れ。
伊勢守に任命されたから、伊藤。
木工助に任命されたから、工藤。
加賀介に任命されたから、加藤。





この本を読んで、はっとしたのは、姓と名字って、違うということ。




例えば、織田信長
正式な名前は、

織田上総介平信長(おだかずさのすけたいらののぶなが)



なんですね。
プチじゅげむ系。



この名前の中の「織田」は、出身地「越前国織田荘」からとった名字
「上総介」は、通称
平清盛につながることを示す「平」が
そして、正式な名の「信長」がついて完成と。




海外に行ったら、同じ名前がいっぱいいて、アルファベット26字だからといって、どうしてこうも「スミスばっかりなんだ!」と思うことがある。
「また、ジョンか!」と嘆くことがある。
日本は、明治時代に「名字必称義務命令」が発せられたから、名字を持っていなかった人も新しい名字を作っちゃって、たくさんの名字があるんだね。
なるほど。
家紋は、ヨーロッパの紋章とは違って、一人に対し、世界に一つのものがあるわけじゃない。
同じものを他の家で使っていたり、名家にあやかって真似しちゃったりもOK。
貴族文化が栄えた時代に、単なる趣味で、好みの図柄を衣服や輿車に装飾したことが始まりで、武士時代になると、どこの誰かがすぐに分かるための目印になったそうだ。
鎧なんて着ていたら、敵だか味方だか、分からないもんね。
そして、江戸時代以降は、屋号のしるしになったり、家の象徴となっていったと。
日本の家紋が白黒シンプルである一方で、ヨーロッパの紋章は、権力や支配の象徴であり、個人を示すので、むちゃくちゃ複雑。
人と同じのを使ってはいけないので、「紋章院」という役所で管理までしているとのこと。





この本には、様々な家紋を種類別に挙げていて、見たこともない紋に驚く。
野菜のカブやムカデをあしらったものもある。



不思議なのは、カニなどの水生生物はいるのに、魚がないこと。
どうしてだろうね。




日本女性が大好きなブランド「ヴィトン」。
あのモノグラムは、なんとパリ万国博覧会で日本文化が人気を得た時に、家紋をヒントにデザインされたらしいよ。
日本サッカー協会のシンボルマークについている三本足のカラス。
これは、紀州熊野三山の家紋となっていて、太陽に棲むと言われている金のカラスなのだそうだ。
ずっと疑問だったあのカラスの理由がやっとわかったよ。




ちなみに私の実家の家紋は、蔦。

あれ、画像曲がってる?
蔦は、江戸時代に大流行したと書いてある。
松平家が蔦紋使用の代表格。
たくましくはびこる感じが子孫繁栄をイメージするからだとか。
花柳界の女性にも人気で、お客に絡みついたら離さないように・・・だとか。
こわいなー。