犯行現場の作り方

犯行現場の作り方

犯行現場の作り方

元々、私は、間取り図というのがとても好き。
学校の授業で自分が住みたい家の間取り図を描くというのがあったけど、あれは楽しかったなあ。


この本の著者は一級建築士の安井俊夫さんで、子どもの頃からミステリーや推理小説が大好きな方だ。
ミステリーの中には、事件の舞台となる家が登場する。
「密室」「抜け穴」「回転する壁」「隠し部屋」があったり、変わった屋敷が登場することもある。
安井さんが、本の記述をもとに建物を解析し、建物全体像を実際のちゃんとした建築図面に落とし込む作業をしたというのがこの本だ。
ちょっと建築の知識も得られるよ。
例えば、単独で建っている塔があって、その塔には地上12mのところに唯一の部屋(床面)があれば、この塔は建築基準法上は、 「平屋建て」になるのだそうだ。
建築法上ありえなかったり、建物の形を優先したがために合理的といえない信じられない間取りになっている箇所も発覚していくのだけど、本の内容は、ミステリーとその作者と設計という仕事への愛が感じられる。
もちろん、取り上げたミステリーのトリックをばらしてしまうようなことも避けているよ。



まずは、その建物がある場所を検証する。
作中の記述から割り出すのだ。
それから、登場人物の動きも材料にし、全体図から部屋の配置・建物の測量も考察する。
まさに推理のような作業だ。
それをCADを使って、図面におこす。




作者や作中の建築物を設計した人の気持ちを想う著者は、ミステリーを2倍も楽しんでいるような感じだ。


取り上げられている建物をいくつかご紹介。(目次より)



・建物も廊下も十字の屋敷
  「十字屋敷のピエロ」東野圭吾より
 火事が起きても逃げやすい!? バリアフリーな3階建て。


・元・天文台の大豪邸
  「笑わない数学者森博嗣より
 オリオン座を表現。中と外を逆転させた天才的建築家の趣向。


・正方形を2等分した三角屋敷  
  「三角館の恐怖」江戸川乱歩より
 実は台形!仲たがいで真っ二つにした奇妙な洋館。


・斜めに5度傾けられた館
  「斜め屋敷の犯罪」島田荘司より
 極寒の宗谷岬に立つ、傾いた屋敷とピサの斜塔を模した塔。
  



建築図面なんて想像したら、推理もますます楽しくなりそう。