犬と猫と人間と

uiui2009-10-15


渋谷のユーロスペースにて。
多分、この映画を観に来てるお客さんは、この映画を観る必要のない人たちだ。
わざわざこんなつらい映画を観るために休日の午前中を費やすんだからね。
ヒリヒリヒリヒリと心がつねられるような痛みを感じる。
「もらい泣き」というよりは、人間であることを懺悔するような、いやーないやーな涙が湧き出てくるのだ。




日本では、1日に約1000匹の犬や猫が処分されている。
犬は、元の飼い主や新しい里親が見つかるかもしれないので、数日は施設に置かれるが、猫は連れてこられた翌日に処分だ。
こういった施設は、愛護団体などから理不尽な非難を浴びるので、大抵はマスコミの取材や撮影は断るところ。
でも、命がどう扱われているか、人間のエゴがどんなものかを理解してもらうためにちゃんと見せた。
犬たちが炭素ガスで窒息死させられる箱に入るところを。
あと数時間で生まれそうな赤ちゃんを身ごもっている母猫を中絶・避妊させる手術を。
動物を殺す施設を近所に建設されるのは嫌われるので、ガス室は車に設置されている。
その車が焼却炉に到着する頃には、犬たちは息絶えているというシステムだ。
新しい里親に引き取られる犬は、全体の1〜4%弱。
あとはガス室
ナチスを思い出すね。
1匹でも多く新しい生を授けたいという思いで、しつけができていない犬にはプロのトレーナーがつけられる施設もある。
吠えたり、散歩の時に引っ張る子は、引き取られても戻されてしまうのだ。





この映画の製作は、稲葉おばあちゃんが、知り合いでもないこの監督に話をもちかけたことで始まった。




「命を軽んじられている犬や猫たちの映画を作ってください。制作費に私の財産を使ってください。」



唯一の条件は、



「私が生きているうちに、完成した映画を観る事ができれば」




だったけど、叶わなかった。
日本は、「ペット大国」と言われるけれど、 「ペット天国」ではない。
その理由を、事実を映像で、手っ取り早く伝えたい。
それが稲葉さんの願い。
監督は、路上で暮らす人間のドキュメンタリー映画は撮ったことがあるものの、犬や猫にすごく興味があるわけではなかったので、1から調査・勉強をしなくてはならなかった。そして、そこには大変な現実があった。
映画を製作しながら、現実を理解することで、落ち込んでいったりした。
そんなこんなで間に合わなかったのだ。







人間にとっては本当は観たくない映画だろなー。
淡々と現実を映し、ナレーションも大きな抑揚はない。
一方的にメッセージをぶつけられない代わりに、じりじり考えさせられる。
波紋を呼ぶだろうけれど、学校などでみんなに観てもらいたいと思った。
人間同士を大事にすることも学べるはずだもの。

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